東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の布村幸彦副事務総長は、東京オリンピック・パラリンピックの開催概要とともに、同組織委員会の取り組みについて説明。「東京オリンピックは、2020年7月24日に開幕し、18日間に28の競技が行われ、204カ国から1万500人のアスリートが参加。8月25日からは東京パラリンピックが開幕し、164カ国から4200人が参加する予定である。2015年1月から6年間に渡り、ジョイントマーケティング活動を実施。1,500億円の協賛金額を目標に、組織委員会が大会運営およびオリンピックムーブメントの推進に必要な資金を得ることを目的に活動する。これは、選手強化策として収入の一部をJOC(日本オリンピック委員会)とJPC(日本パラリンピック委員会)にも配分することになる。8月までにジョイントマーケティングのプログラムを策定し、日本の社会の強みが生きるような弾力的な取り組みも考えていきたい」などと語った。

【左】パネルディスカッションの様子 【右】ボストンコンサルティンググループ日本代表の御立尚資氏

「東京オリンピック・パラリンピックに向けて変革する日本の姿と課題」と題したパネルディスカッションでは、モデレータのボストンコンサルティンググループ日本代表の御立尚資氏は「1964年の東京オリンピックの際は新幹線が開通し、多くのホテルがオープンし、警備会社も誕生し、東京の姿が大きく変わった。次のオリンピックで何が起こるのか。今日は、Wonderという切り口からも、ワクワクした議論をしたい」と切り出した。

観光庁の篠原康弘審議官が「日本へは、昨年初めて1,000万人の外国人が訪れた。今年も4月までに400万人が訪れており、過去最高のペースである。しかし世界的にみると、日本へ訪れる観光客数は世界では33位、アジアでは8位であり、まだ少ない。日本は、人口減少や高齢化が進むなかで交流人口を増やす必要がある」と、外国人誘致の必要性を強調。「2020年には2,000万人の訪日外国人を目標にしているが、それは極めて高い数値である。世界的な試算では1,500万人といわれており、このままでは500万人も足りない。日本への観光客の95%が空路を使っているが、そのうちの50%が成田と羽田を利用しており、キャパシティの面でも問題がある。LCCなどを使って地方都市を回ってもらい、そこから直接、日本を出てもらうという仕組みや、船で訪れるルートの整備なども進める必要がある。また、日本を訪れる人の50%が一人旅。ICT技術を活用して、一人旅をサポートするインフラづくりも必要だ」と述べた。

「2020年には2,000万人の訪日外国人を目標にしている」と語る観光庁の篠原康弘審議官

アスリートソサエティ代表理事の為末大氏は「日本は、2070年には人口が1億人を切り、高齢者が38%を占めるだろう。その時代を想定すれば、2020年に何をすればいいのかがわかる。高齢者が増加すれば、障害者も増加することになるだろう。そのためには、街がバリアフリーになっていることが必要。東京オリンピックの際には、パラリンピアの人たちに、街中をチェックしてもらうことで、2070年の超高齢化社会の街づくりができないかと考えている」と、パラリンピックが街づくりにもたらす効果に期待を寄せた。

また、「日本の道は地方に行っても非常にきれいであり、使われなくなった学校をリノベーションすれば、数百人規模で泊まれる施設ができあがる。これによって、海外旅行客の多くを占めるバックパッカーにも対応できる。新興国が先進国に仲間入りする、発展に向けたオリンピック・パラリンピックではなく、次世代の成熟した街へと生まれ変わるという、オリンピックとパラリンピックの新たな役割を目指すことができるのではないか。それをIOCに提案していくことも考えられるのではないか。また、常時開放している選手村をつくり、平和の象徴になるといい」と述べた。

電通 スポーツ局次長 2020東京オリンピック・パラリンピック室長の伊藤一氏は「オリンピックのスポンサー各社は、2020年の東京オリンピックを最高の大会にしたい、ここでイノベーションを起こしたいという使命感を持って参加している。自動車のスポンサーであれば、そこで何台売るということを考えているのではなく、未来の自動車社会をどうするのか、それに向けたイノベーションのきっかけづくりとして、東京オリンピックを位置付けている」と、産業界においてオリンピックが持つ重要性を説き、「電通も2020年に向けて、世の中の課題を解決したい、世の中に新たなことを起こすということを真剣に考えたい。旅館に行くと、外国人の方々はそのホスピタリティに驚く。こうした日本のおもてなしの文化が世界に広がることも願いたい」と語った。

【左】アスリートソサエティ代表理事の為末大氏 【右】電通 スポーツ局次長 2020東京オリンピック・パラリンピック室長の伊藤一氏

「Wonder Life-Box 2020」で2020年のライフスタイル提案

一方、パナソニックでは、パナソニックセンター東京に新たな展示施設「Wonder Life-Box 2020」を開設。この日、Wonder Japan Forumの参加者に公開した。

パナソニックが考えるクラウドを活用した「2020年のより良いくらし~A Better Life,A Better World」を具体的に展示する場と位置づけ、「憧れの豊かなくらと~自分らしく、快適に~」をコンセプトに、音、映像、エネルギーの3つの情報をクラウド上で分析し、くらしコンシェルジュとして、人や家族に最適なサービスを提供するくらしの提案や、ビジネスパートナーとの協業により、街や社会のサービスが生活に取り込まれる2020年を想定したライフスタイルの提案を行う。

クラウド上の荷物情報をもとに冷蔵や冷凍による物品管理を可能にするスマートロッカーサービス、食材にあわせたレシピ表示や対話をしながらの料理創作、レシピ公開といった趣味の料理を楽しむ音声対話型マイプロフェッショナルキッチン、鏡の前に立つと床埋め込み型体組成計やカメラが、体重や心拍数、頭皮の状態などをチェックするヘルスケアサービスのヘルスケアスマートナビなどを体験できるようになる。

Wonder Life-Box 2020の一般公開日は、6月7日以降の土、日、祝日。当日予約制となっており、入場は無料だ。