そして、なんといっても、シャープの経営を左右するのは液晶事業だ。
液晶の2013年度売上高は前年比17.0%増の9,910億円、営業利益は1,389億円の赤字から、415億円の黒字となった。スマートフォンを中心とした中小型液晶が好調であり、モデルミックスを改善。特許関連などのエンジニアリングビジネスも寄与したのが大幅増益の要因だ。2014年度は、液晶の売上高が前年比0.9%増の1兆円、営業利益は32.2%増の550億円と、さらなる増益を見込むことになる。増益要因として、堺工場が連結対象から外れたことで身軽になった点は見逃せないだろう。
そして、これからの成長の鍵となるのは中小型液晶だ。
大西副社長は、「亀山第2工場の中小型比率を、現在の20%から2014年度上期中には50%に高める」と力説する。中小型液晶では、スマートフォンを中心にタブレット向け、ノートPC向けが含まれるが、ここでのポイントは2つある。
1つは、取引が急拡大している中国スマートフォンメーカー向けの事業拡大だ。高橋社長も、「中国スマートフォンメーカー向けの受注が急速に拡大しており、新規顧客が拡大している」と語る。
液晶事業の売上高1兆円達成には、いまや中国スマートフォンメーカーとの取引拡大が不可欠で、2014年度下期には中国重点ユーザーを前年同期の6社から10社へと拡大する考えだ。そして、2013年下期には中国スマートフォンメーカー向けのFHDの高精細モデルの比率は半分以下に留まっていたが、2014年度下期には、WQHDモデルの追加もあり、FHDとあわせた高精細モデルの構成比を約9割にまで高める考えであり、これも収益を高める要素のひとつになる。
高付加価値戦略にとっての懸念は値崩れ
もう1つのポイントはIGZO液晶だ。シャープが先行しているIGZO液晶を採用する企業は、2013年度下期には12社であったが、2014年度上期には22社、下期には25社に拡大する見通しを立てる。スマートフォン、タブレットに加えて、タッチパネル搭載が広がっているノートPCやPC用モニターの領域でも、IGZO液晶の販売拡大に挑む。
高橋社長は「IGZO液晶は、採用ユーザーの広がりにより、2014年度上期には2013年度上期比約7倍、下期には2013年度上期比で9倍超の売上高を見込む」と強気の姿勢をみせる。
だが、懸念材料がないわけでもない。高精細液晶やIGZO液晶といった付加価値戦略を推進するなかで、中国スマートフォンメーカーへの液晶供給は、液晶価格の値崩れの原因ともなりかねない。2013年度は重点ユーザー9社で売上高の半分を目指すとしていたが、新規ユーザーの拡大で、新たに中国重点ユーザー6社という呼び方を開始。だが、これを加えた15社でも売上高の半分には届かない。この点では、中期計画の見直しが必要になっている。PC市場の世界的な停滞もマイナス要素だ。さらに、アップル向けの専用工場ともいわれる亀山第1工場の今後の稼働率を懸念する見方もある。
「液晶事業は重点ユーザーとの関係強化、亀山工場での中小型展開加速により、550億円の営業利益を目指す」と高橋社長は語るが、中小型液晶の事業の舵取りの難しさは一層強まったといえよう。