「売上高、営業利益、当期純利益は公表数字に達しているが、個々の事業を見るとブレがある。また、中期経営計画の初年度が計画通りに行けたとしても、3分の1が終わったわけではない。初年度はなんとか数字ができたが、いま新たにリセットして、今年度(2014年度)はまたゼロの気持ちで向かっていきたい」
2013年度連結業績を発表したシャープの高橋興三社長は、このように、自らの気持ちを総括してみせた。その言葉には、まだ予断を許さないという気持ちが表れている。
シャープが発表した2013年度連結業績は、売上高が前年比18.1%増の2兆9,271億円、営業利益は前年同期の1,462億円の赤字から1,085億円の黒字に転換。経常利益は2,064億円の赤字から532億円の黒字に、当期純利益は前年同期の5,453億円の赤字から115億円の黒字となった。
シャープの大西徹夫代表取締役兼副社長執行役員が、「2月公表値をクリアし、利益では全ての項目で大きく改善し、黒字化した」と語るように、3期ぶりの黒字化という点では、まさにV字回復を実現してみせた。
2013年度の数字が良かったからこれからもいいとは言い切れない
だが、高橋社長は厳しい姿勢を貫き通す。
「例えば、太陽電池事業は大きく上振れしている。だが、うまく行っているのかというとそうではない。2014度の太陽電池事業はマイナスの事業計画。まだ事業転換を図っている途中にあり、課題が残っている。ビジネスソリューション事業も数字は悪くはない。だが、2015年度、2016年度という先を考えると、いま手を打っておかなくてはならない。単年度でよかったものが、これからもいいとは言い切れない。また、悪いものが悪いとは言い切れない。そう認識している」とする。
実際、太陽電池の売上高は前年比68.9%増の4,390億円、営業利益は前年の44億円の赤字から、324億円の黒字に転換。国内向けメガソーラーなどの産業用が好調に推移。さらに海外ディベロッパー事業が売上および収益に貢献した。だが、2014年度の太陽電池の売上高は前年比33.9%減の2,900億円、営業利益は前年の324億円の黒字から50億円の赤字に転落する見通しだ。「海外ディベロッパー事業のプロジェクト案件の減少や、国内住宅用の販売減に加えて、円安による輸入部材のコストアップが、大幅減収および赤字の見通しにつながる」(大西副社長)という。
また、ビジネスソリューションの2013年度の売上高は前年比7.4%増の3,188億円、営業利益は25.5%増の305億円、2014年度も売上高が前年比6.6%増の3,400億円、営業利益は14.9%減の260億円。数字の上では比較的堅調だが、複写機ビジネスでの収益性の悪化などの懸念材料があるのは事実だ。