続いて、Borton氏が示した「もうひとつ大きなムーブメント」は、「折り紙」のような雰囲気の素材。クラウドテクノロジーのような「概念的なもの」、「科学的なもの」を折り紙で表現したり、折り畳んだ紙のような形状でインフォグラフィックに用いる風潮も見られるという。「紙を折り曲げてつくったような文字や、さらにはポリゴンのように見えるものもあり、現行のさまざまなトレンドを組み合わせて表現する傾向があるのがこのカテゴリーです」と、その特徴を解説した。
そのほか、素材の定番である「アイコンセット」のデザインは、シンプルでフラットになっている傾向があるとのこと。その理由として、「モバイル端末の解像度があがるにつれ、細い線のデザインも鮮明に表現できるようになったことも理由のひとつではあります」と前置きしつつ、「これはiPhoneが新しいiOSのアイコンにフラットなデザインを採用した影響が大きいと思われます」と、世界的に普及したiPhoneが及ぼした影響について語った。そして、ビビットな単色で、一方向のシャドウをつけて奥行きをみせるようなイメージで、Appleが「アクアスタイル」と呼んできた、透明感と立体感のあるアイコンは少し古いような印象を受けるようになりました」とも付け足した。
"古い"イメージを与えてしまう素材の傾向とは
こういった具体例を含めたプレゼンテーションのあとに、Borton氏はイラストレーターの当事者であれば当然気になるであろう内容を加えた。それは、明確なダウントレンド―流行から遅れてしまったイメージの傾向についてである。同氏は具体的な例として、「街角で見かけるグラフィティのようなもの。インクをこぼしたような、ダーティなイメージのもの。渦を巻いたような流線系の植物や花など。このようなジャンルは減少傾向にあります」と言及。色で言うと、「明るいグリーン、オレンジ、ブルー、レインボーカラーなど」はダウントレンドで、現在は「くすんだ色味、いわゆるビンテージカラーが人気」だという。
また、常に上位にはある人気のジャンルだという「人物のシルエット」だが、その使われ方が変わってきているそうだ。Borton氏は、「鮮やかな背景のパーティピープル、クラブやダンスなどのシルエット、サラリーマンのシルエットなどは古い感じを受けますね。フラットなインフォグラフィックとしての使われ方がこれからはメインになってくると思います」と、今後の展望も合わせて語った。
最後に、Borton氏は、参加クリエイターたちに、以前作ったベクターを活用することを勧めていた。「古いものを生まれ変わらせることができるのもベクターデータの素晴らしい側面のひとつです。色をかえてみたり、バックグラウンドの処理を変えたりする事で、トレンドに合う新しい作品として再度発信することができるわけですから、まずは全てをためしてみることが大切です」という前向きなコメントによって、プレゼンテーションは締めくくられた。
確かに、人物のシルエットなどは着ている衣装のフォルムや髪型を今風に変えるだけでもずいぶんと印象が変わる。最新のトレンドをしっかりと把握しつつ、そのなかでも「自分らしさ」を表現しながら試行錯誤を繰り返す事で、よりユーザーに選ばれるイラストレーションを作り上げる。そういった作り込みがこれからの作品作りに重要だとセミナーを通して考えさせられた。