江差駅に到着した後、折返しの列車で湯ノ岱駅へ
上ノ国町に入ると天気も回復し、晴れ間も見えるようになった。外の景色も開けてきて、田園地帯の向こうの山々に風力発電のプロペラが並ぶ風景へと変わる。
町の中心となる上ノ国駅を発車すると、今度は晴れわたる空の下、濃いブルーの日本海が広がる車窓風景に。先ほど不安な気持ちにさせられたこともあるのだろう。その風景を眺めているうちに、思わず安堵のため息が漏れた。
普通列車122Dは12時55分、終点の江差駅に到着。すぐに折返しの普通列車131D(函館行)となり、同駅を13時7分に発車する。その次に列車が来るのは3時間後。そこで江差~湯ノ岱間を往復しようと思い、普通131Dに乗ることにした。
山小屋風の駅舎が建つ湯ノ岱駅は、木古内~江差間で唯一、列車の交換が可能な駅。ここから江差駅まで、全国でも珍しいスタフ閉塞区間で、スタフ(通票)を交換する風景も見られるのだが、残念ながら湯ノ岱駅で列車同士がすれ違うのは朝の2回だけだそうだ。
湯ノ岱駅にも多くの鉄道ファンが集まっていたが、ここも普段は静かな集落なのだろう。駅周辺を散策している途中、道路沿いに「130年の歴史に幕を閉じます ありがとう 湯ノ岱小学校」の看板があり、いろいろ考えさせられる。駅も学校もなくなるこの静かな集落に、再び多くの人々が集まることはあるだろうか?
転機迎える江差線、五稜郭~木古内間も第3セクター鉄道に
木古内~湯ノ岱間が開業したのは1935(昭和10)年12月。当時の線名は「上磯線」だった。翌年11月に湯ノ岱~江差間が開業し、このとき「江差線」に改められた。
江差線にとって、最も大きな転機といえるのが1988年の青函トンネル開業。海峡線が分岐する木古内駅を境に、まったく別路線のようになった。五稜郭~木古内間は電化され、優等列車が多く行き交う区間に。一方、木古内~江差間は単線非電化のまま残された。
2015年度末の北海道新幹線新青森~新函館(仮)間開業で、江差線は再び大きな転機を迎える。5月11日の営業運転をもって木古内~江差間が廃止され、翌日から代替バス(函館バス江差木古内線)が運行開始される。五稜郭~木古内間も、新幹線開業と同時に第3セクター鉄道へ移行するとのこと。その際、80年続いた「江差線」の線名は残るだろうか? 江差駅を通らない路線だけに、新たな線名での再出発となりそうな気がしてならないのだが……。
なお、江差線木古内~江差間の廃止を前に、5月10・11日に団体専用の臨時列車「さようなら江差線号」が運転される。14系客車をディーゼル機関車が牽引し、函館~江差間を走るという。11日には、「さようなら江差線(木古内~江差間)お別れセレモニー」が木古内駅・湯ノ岱駅・江差駅で開催される。