「シャッタータイムラグ」については、今や本機のみならずコンデジの現行製品の多くですでに解消されている。それより、移動する鉄道車両をベストな位置(地点)で捕らえるには、ズームと合焦の速さの方が重要だ。そしてこれは、PowerShot SX700 HSの白眉でもある。光学30倍ズームの豊富な画角を使いこなすにはズーム操作を多く繰り返すことになるが、本機のズームの素早さと静かさ、滑らかさは狙った車両に吸い付くように迫り、画角が決まったと同時に合焦する。
おかげで、レールの彼方に見え始めた列車を「撮りたい」と思ってからカメラを取り出しても間に合ったことが多かった。ほかにも、ズームで追いかけての後追い(通過した列車を後ろから撮ること)がしやすいなど、この速さと正確さは、鉄道撮影の大きな武器だ。
列車の入線に気付いてからカメラの電源を入れても、ズームと合焦が速いのでしっかりフレーミングできる(焦点距離330mm相当 1/60 f5.6 ISO800、原寸大画像を見る) |
走り去るトラムを追っかけ撮影(焦点距離358mm相当 1/100 f5.6 ISO800、原寸大画像を見る) |
停車中の車両の前を走って横切る女性。この位置、と思ったところできちんとシャッターが切れてくれた(焦点距離25mm相当 1/30 f3.2 ISO200、原寸大画像を見る) |
複雑な架線と車両を一緒に収めるべく、追っかけで撮影。しかし、ちょうど左に人が入ってしまった(焦点距離750mm相当 1/320 f6.9 ISO200、原寸大画像を見る) |
ならばと、いっそ構図に入れてしまう。焦点距離750mm相当では、天気が好いと空気の揺らぎも写る(焦点距離750mm相当 1/320 f6.9 ISO320、原寸大画像を見る) |
ズーム性能のアドバンテージは、動画においてもきわめて大きい。前述の強力な手ブレ補正(動画撮影時は)とも相まって、手持ちでも非常に撮りやすく、画質も十分満足できるクオリティ。
【動画】PowerShot SX700 HSで撮る「トラムが走る街角」(60P) |
何をもって「鉄道写真に向いている」とするかについては、さまざまな意見があると思う。だが、少なくともPowerShot SX700 HSが「鉄道写真を撮れる性能」を十分に有していることは確かだ。気軽に持ち歩けるサイズはもちろん、望遠での雰囲気ある描写や交換レンズを持ち歩く必要のない手軽さなども含めた、総合的なパフォーマンスでは一眼カメラを大きく超えるだろう。今回のように旅先での撮影においてはなおさらだ。