試聴用に接続したスピーカーは、JBLの「4305H」だ。MAP-S1に搭載されているアンプは、フルデジタルの「S-Master HX」。モバイル機器向けの「S-Master MX」をハイレゾ対応にしたものだ。また、圧縮音原や音楽CDのサウンドをハイレゾ音源相当の音質に引き上げる「DSEE HX」も搭載している。普通の室内なので、それほど大きなパワーは掛けられなかったが、コンパクトなシステムでありながらドライブ能力が不足するということはなかった。
MAP-S1と4305Hを組み合わせた場合、基本的な音の特徴は4305Hのものなのだが、以前聴いた「UDA-1」と4305Hの組み合わせよりも、さらに中高域の情報量が増えているように感じられる。
MP3で128kbps以下といった低ビットレートの非可逆圧縮ソースでは、DSEE HXの効果は非常に高い。一方、CDからの再生の場合には、情報量が増えているように感じられるのだが、この補正の効果が正しいのかどうかは確証が持てない。
しかし、そういったことを考えずにシンプルに使うのが、MAP-S1には向いているようにも思える。192kHz/24bitのソースだけでなく、Bluetoothで接続したスマートフォンから低ビットレートのインターネットラジオを流しっぱなし……といった使い方でも、質の高さは感じられ、アンプとしての完成度が窺える。
ハイレゾ音源にこだわりがない人にもオススメ
最近では、スマートフォンを音楽プレーヤーとして使用している人が多いようだ。外出時だけでなく、室内でスピーカーで音楽を鳴らすための機器も充実してきている。
スマートフォンの音楽をスピーカーで聴くための機器としてよく使われているのが、Bluetoothスピーカーやパーソナルオーディオシステムと呼ばれる一体型のシステムだ。これらは、昔でいうところのラジカセの位置にあるといってよい。手軽だが拡張性には乏しい。新しい規格、例えば、Bluetoothの高音質なコーデックやハイレゾ音源のようなものが出てくると、それに対応させるためにはシステム全体のリプレースが必要になる。
これはミニコンポでも同様だ。ミニコンポの場合、新機能を追加することは、100%不可能というわけではないが、ミニコンポの手軽さをスポイルしてしまううえ、費用対効果的にもあまりよろしくない。
既存のミニコンポを新しい規格に対応させようとした場合、CD/チューナー/アンプ部分をリプレースしてしまうのが手っ取り早い方法だ。MAP-S1は、ネットワークやデジタルデバイスとの接続性の高さがひとつの特徴であり、手軽に最新の機能を使いたいという人にはうってつけの製品だ。UDA-1というチョイスもあるのだが、UDA-1はあくまでもDACアンプで、PCとの接続を前提にしている。それに対してMAP-S1は、単独での動作を考慮しており、ミニコンポ本体部分のリプレース用としても十分に納得できる製品だといえるだろう。