清潔感あふれる1つのフロアにすべてのエンジニアを集約
この製品開発の現場における品質に対しても同社は並々ならぬこだわりを見せる。同社の社員数は国内だけで188名。その内100名近くがこの2階に居る。1つのフロアにソフトウェアエンジニアが約60名、ハードウェアエンジニアが約20名、そのほかに開発管理を担当するスタッフなど、すべての開発に携わる人員が集約されているのだ。また、開発したソフトウェアは開発担当エンジニアごとにデバッグを行うほか、ソフトウェアの品質試験を専門に担当するスタッフが10名おり、そうしたテスト検証チームが常にソフトのチェックを行い、試験レポートを作成、1つでも不良・不具合と判断されれば、手戻りとなり続ける。
そのため、エンジニア1人ひとりについても、プログラムのソースコードに対するレビューなどを仲間同士で行い、他人が見てもわかりやすいコードの記述方法などを教えあったりと、不具合の元になるスパゲッティコードのような自分勝手な記述を排し、出荷前にバグを潰すということを徹底している。
こうした人に紐づく品質へのこだわりのほか、フロアそのものにもこだわりが施されている。天井には電灯だけで、空調設備などは側壁か床下に配置されているほか、柱も太すぎない直径18cmの白塗りの円柱を採用。デスクも移転前から使用しているものを除いてはオリジナルのものを採用し、パーティションも1m程度の高さに抑えている。この結果、どういったことがこのフロアで起こっているかというと、なんと約60mの奥行きを持つ開発フロアの端から端まで見渡せるのだ。
これが何を意味するかというと、どこに誰が居るのかが即座に把握できる。つまり、ソフトエンジニアの元にハードエンジニアがすぐに行って、そこですぐに問題を相談し、解決に向けた取り組みをスムーズに進めることが可能になるというメリットを生み出している。
このほか、壁には「良いチームになるための10カ条」、「マネージャーへの20カ条」、そして同社の現在のコアコンピタンスである「品質方針」が掲げられている。現在、3カ条が記載されているこの品質方針について同社の社員は暗記するまで叩き込まれるとのことで、エンジニアには品質こそが自社の命であることを意識づけさせる役割を担うものとなっている。
こうした品質へのこだわりは各エンジニアのデスク周りにも表れている。ドキュメント類が無造作に散らばっていたり、エンジニアの趣味のグッズなどが置かれていたりということがないのだ。なにもそこまで、という気がしないではないが、あのドキュメントはどこに置いたっけ?、などという気持ちのゆるみがバグを生み出し、それが品質の低下を招く、という徹底した意識付けが生きている。これは、各エンジニアのデスク周りだけでなく、建物そのものにも生きている。建物の外観がきれいだと先述したが、内部も汚れがパッと見て存在しないのだ。建物外周部の草刈りも毎月一回、社員たちが自らの手で実施しており、清潔感を出しており、いつどのような来客があっても、魅せる空間、としての存在感を維持している。