本作のテーマは「役者を撮る」

これらの作品を通して長年の付き合いであるお二人に、お互いの昔との違いについて質問が投げかけられた。

押井監督:(千葉氏は)やっぱり年取りましたよね。昔は骨と皮しかなくてガンジーって呼ばれてたの。食べない人なんですよ。今は……。

千葉氏:(腹部を指して)これ、班長のために腹出したんですよ! 唯一の役作り。

押井監督:衣装合わせのときにすでに腹が出ていたので、さすがの千葉くんも太ったと(笑)。

逆に千葉氏から見た押井監督は「全く印象が変わっていない」と答えながらも、「若い頃より丸くなった」という部分には賛同。押井監督自身も、作品づくりは「かなり変わった」という。

押井監督:特に今回、役者さんと向き合って仕事したというか。"役者さんを撮る"というね。

千葉氏:だって、(以前は)役者を信用していなかったでしょ?

押井監督:信用していなかったわけじゃないんだけど、思った通りに動かないので、テキパキ動けないんだったら動かなくていいと。だから止めちゃったんですよ。

"思った通り"というのは、「もっと速く走る」とか「4m飛ぶ」といった動きのことだそうで、アニメでは容易でも実写ではそうはいかない。また、昔の作品では絵コンテを切って撮影を行っていたが、近年はそれをしなくなり、今回は台本も現場に持って行かなかったそうだ。

「写真を撮る時は"ハマチ"って言うといいんです」と語っていた千葉氏

押井監督:現場に入るまで何も考えないようにしたんです。その日役者さんの顔を見て、まず好きに芝居をしてもらって、そこからいじり始める。

千葉氏:役者がしゃべりながら動き回って、瞬間的に芝居を作る。それを通して見た後で、じゃあこういうふうに割って行こう、というかたちです。

押井監督:コンテで撮ると役者さんを型にはめてしまって、芝居が小さくなってしまう。今回は役者さんの芝居に合わせて構図を決め、カメラワークも決めていきました。まずやってもらう。役者は動きたいものなんですよ。

その場その場で演出を考えることで「ある種のライブ感」を持たせることもテーマになっていたそうだ。確かに今作では、過去の作品よりも画が動き、長回しのカットも印象に残る。今後のシリーズでも注目したいポイントだ。

思い出話から作品作りの思想にまで及んだトークは、予定時間を10分ほどオーバーして終了。最後に、来場者へのあいさつでイベントを締めくくった。

千葉氏:もうちょっといろんな話をしたかったんですけど、あっという間ですね。パトレイバーはみなさんの愛だけが頼りです。来年のゴールデンウィークまで続きますが、応援よろしくお願いします。

押井監督:回を追うごとに楽しくなる仕掛けになっています。個人的には3話は気に入っているんですけど、3話は真野がかわいい。僕も平気でそういうことを言える歳になったなと(笑)。次回、こういう機会があったらまたぜひお会いしたいと思っています。今日はありがとうございました。

『THE NEXT GENERATION パトレイバー』シリーズ第1章は4月5日より新宿ピカデリーほかで2週間限定イベント公開中。第2章は5月31日より。2015年ゴールデンウィークには長編版が全国公開される予定となっている。