第5局・屋敷伸之九段 対 Ponanza
Ponanza開発者・下山晃氏:私自身は将棋をほとんど指せないので、今回検討室にお邪魔して、色々な方の話を聞いたり、会場へ行けなかった時も動画で解説を聞いたりして、色々とためになりました。コンピュータ側が勝った対局も、負けた対局も、色々コンピュータ側にはまだまだ課題があるなという感じを受けておりますので、また、これからもプログラムを強くしていけたらいいなと思っています。
Ponanza開発者・山本一成氏:下山の話の続きになってしまいますが、今日の第5局は、途中は金銀の駒得をPonanza側はしていたけれども、プロ棋士の見解ではほぼ互角。その後、すべてのコンピュータ将棋側の評価値が下がってきたという話を聞き、まだまだ正しく局面を認識する能力が高くないということを、まざまざと見せつけられました。今後、どうやって修正すればいいのかわからないんですけども、改善点はまだまだいっぱいあります。人間にできることはいつかコンピュータにできると私は思っているので、そういうこともちゃんと表現できるような、評価関数なり、何らかのフレームワークができればと思いました。
屋敷伸之九段:個人的には、非常に熱戦でしたので、最後競り負けてしまったのは残念でしたが、しっかり自分なりに準備できましたし、いい将棋が指せたと思っておりますので満足しています。ただ団体戦としましては、棋士側が1勝4敗と完敗でありました。先ほど森下九段がおっしゃっていましたが、盤駒を使ってどうなるか――また、今後電王戦が第4回、それ以降も続くとしましたら、関係者の皆さまに色々と考えていただきまして、どういうルールがいいのか……非常に難しいと思いますが、また続けて欲しいと思います。団体戦の大将という位置づけでしたが、そういった意味では棋士側の完敗は残念でした。今後のプロ棋士側の課題が残った形になりますね。
谷川浩司九段:第2回とレギュレーションを変更したわけですが、この1年間でコンピュータがさらに強くなったというのが実感であります。特に第1局の菅井五段は、将棋連盟としても自信を持って送り出した期待の若手なんですけれども、習甦の指し回しが本当に見事でありました。ですから、今日のMVPが習甦の竹内さんに決まったことは、第三回の五番勝負の流れを決めたという意味でも、MVPにふさわしい活躍だったと思っております。昨年に続き今年も負け越しという結果に終わりまして、厳しい現実を受け止めなければいけません。
川上量生氏:電王戦に関わるすべての皆さま、本当にありがとうございました。今回数字の上では1勝4敗という結果になりましたけれども、実際の勝負の内容は、そういった数字からはわからない熱があり、非常に中身の濃い素晴らしいものになったと思っています。そして、人間とコンピュータの戦いをどうとらえていけばいいのかということに関しては、森下九段の方からもご指摘がありましたが、人間と人間のルールを適用すること自体がおかしいのではないか、ということも私どもは色々と考えておりました。ルールとして今回は変更できませんでしたが、我々なりに考えた結果、対局者を電王手くんにしてみようかと。そういうことでロボットをデンソーさんにご協賛いただいたような次第です。今後は電王戦が続くかどうかはわかりませんけども、それについては色々なやり方を試していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
また、谷川会長は今後の電王戦について「今後のことに関してはまったく未定であります」と話し、「今回、特に今日は、60万人以上の方が視聴されたということで注目されておりますし、ファンの方もひょっとすると次回も待望しておられるかもしれません。しかし、去年今年の結果を受け、来年も開催されるのであれば、相当な覚悟をもって臨まなければいけないと思っております」と具体的には言及せず。また、タイトルホルダーの出場については「タイトルは将棋連盟のものではないと思っておりますので、これはまったく別だと考えております」と語っている。
なお、川上会長によれば、次回の電王戦については未定であるものの、去年開催した「将棋電王トーナメント」は予定どおり開催されるという。
第3回将棋電王戦 観戦記 | |
第1局 | 菅井竜也五段 対 習甦 - 菅井五段の誤算は"イメージと事実の差 |
第2局 | 佐藤紳哉六段 対 やねうら王 - 罠をかいくぐり最後に生き残ったのはどちらか |
第3局 | 豊島将之七段 対 YSS - 人間が勝つ鍵はどこにあるか |
第4局 | 森下卓九段 対 ツツカナ - 森下九段とツツカナが創り出したもの |