動画再生ソフトとして、定評のあるサイバーリンクのPowerDVDの新バージョン14がリリースされた。4月8日に行われた発表会の模様をレポートしたい。

図1 PowerDVD 14のパッケージ

最初に登壇したのは、代表取締役社長の滝本謙一氏である(図2)。

図2 代表取締役社長・滝本謙一氏

滝本氏は、サイバーリンクの基本方針として、CREATE & PLAYという言葉を使った。これは、Directorなどの動画編集ソフト(CREATEに当たる)、そして今回のPower DVDなどのメディアプレーヤ(PLAYがこちら)を大きな柱とし、開発を行っていくとのことである。さらに、サイバーリンクとしては、モバイルアプリなども提供する。また、クラウドサービスを開始し、どこにいても見たいコンテンツを再生できる環境を提供していくと語った。 次いで、相蘇和貴氏が登壇し、PowerDVD 14の新機能の紹介とデモンストレーションを行った。

図3 相蘇和貴氏

今回のPowerDVD 14の新機能をまとめると、次のようになる。

  • H.265/HEVC対応
  • ハイレゾオーディオ対応と高音質への取り組み
  • 写真RAW画像の対応と一覧表示の対応
  • ソーシャルネットワーク、インターネット動画対応の強化
  • 新クラウドサービスの開始、モバイル&タブレット対応の強化

注目のH.265/HEVC対応

まず、注目したいのは、H.256/HEVCへの対応であろう。H.264/AVCの後継となるコーデックである。単純な比較になるが、H.265ではH.264の約半分のファイルサイズとなる。同容量であれば、高画質な点も注目である。H.265を使うことで、保存容量の削減、ダウンロード時間の削減なども得られる。

図4 H.265/HEVCの再生デモ

その一方で、ハードウェア支援などが現時点では、サポートされていない。したがって、その再生環境についてどの程度のリソースが必要となるか? 気になるところである。図3でもCPU使用率を表示させているが、Core i7-4770といった最新のCPUでも、使用率が80%に達するようなこともあるとのことだ。しかし、見た限りではそれほど負担が高いという印象はない。サイバーリンクの馬場規隆氏によれば、H.265よりも4K(4,096×2,160)でフレームレートが60pといった動画データになると、メモリ性能が求められるとのことである。低速なメモリの場合、データ転送が追い付かず、コマ落ちなどが発生するとのことである。

実際に、デモで4K動画を見た印象であるが、従来の映画などで一般的な24pやデジタル放送の30pの場合、ややぎくしゃくとした印象がある。高解像度になればなるほどフレームレートも高いものが必要となると実感した。実際に、4K放送などでは60pが標準規格となる(8Kでは120p)。今後、より高品位な動画再生環境には、より高いハードウェアリソースが今後は求められるようになるだろう。一方で、モバイルデバイスなどでは、低い転送レートであっても、高品位の動画を再生することが可能となる。当面はこちらの普及が先に進むのではないかと思われる。

4KやH.265以外にも、図5のような拡張が行われた。

図5 Power DVD 14が対応するメディア

ハイレゾオーディオ対応

今回の発表会で、興味深い展示もあったので紹介したい。これまでデジタルオーディオでは、いわゆるCD音質が一般的であった。数値的にはサンプリング周波数が44.1KHz、量子化ビット数が16bitである。音楽CDが登場して以来、PCなどでもこの品質をベースとしてきた(MP3も基本的には、この値である)。しかし、最近では、CD音質を超える音楽データとそのための機器が登場している。PowerDVD 14でも、その対応として搭載された新機能が、排他モードWASAPI(Windows Audio Session API)対応である(図6)。

図6 排他モードWASAPI対応

たとえば、ハイレゾオーディオで作成されたCDやDVDなどを普通に再生しようとすると、Windowsの標準機能であるミキシングを経由して再生される。この際に、CD音質レベルに再サンプリングされることもある。せっかくの高音質データが意味をなさない。そこで、Windowsのミキシングを経由せずに、直接、DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)などに音楽データを転送するというものだ。

このために、[音声の設定]タブに[オーディオデバイスに音声を排他的に出力して、最高音質で再生する]という設定が追加された(図7)。これにチェックを入れることで、排他モードに移行する。

図7 音声の設定に追加された設定項目

発表会では、2つのシステムが展示されていた。

図8 1つめのシステム

Q-TEC製BDドライブをPCとUSB接続する。PCからは、HDMI経由でONKYO製AVアンプ:TX-NR-929に接続し、ヘッドフォンで再生するものである。使用されたコンテンツもQ-TEC社が制作したこだわりの高音質タイトルである(THE EARTH)。興味をひいたのは、BDドライブである(図9)。

図9 Q-TEC製BDドライブ:QDD-1000

ハイクォリティー・データドライブシステム(QDD-1000)と呼ばれるもので、今回、参考出品されたものだ。特徴は、制震性に優れた10mm厚のアルミを使用した上下二層構造のモノコックボディに、ハイエンドオーディオなみの大容量リニア電源を搭載したCD/DVD/BDドライブシステムである。したがって、総重量は約7kgに達する。もちろんプロ仕様で、レコーディングスタジオやBD/DVDオーサリングハウスなどでの利用を想定している。

図10 2つめのシステム

こちらは、一般的な光学ドライブをUSB接続し、さらにONKYO製USB DAC(DAC-1000)をUSB接続する。スピーカーは、ONKYO製GX-500HD:パワードスピーカーである。こちらでもコンテンツは、Q-TEC社のHi-definition reference DiscのAudio Partを使用した

これくらいならば、一般ユーザーでも手が届く範囲であろう。最近では、PC用のハイレゾオーディオ専門に扱うショップなども登場してきている。PCでより高品位でオーディオを楽しむといったことも、可能になってきたことを実感させられた。PowerDVD 14自体はハブのような役目しかしていないが、ハイレゾオーディオを実現するには重要な位置付けといえる。現時点では、USB DACやS/PDIFなどで制限事項などもあるが、PowerDVDでは動画だけでなく、オーディオでも最高品質をサポートするといえるだろう。そして、視聴の感想であるが、ノイズの少なさ、奥行き感が感じられた。低ビットのMP3にならされた耳でも、違うというイメージは強く受けた。

サイバーリンククラウド

クラウド上にコンテンツを保存し、さまざまなデバイスで楽しむ。もはやごく普通に行われている。PowerDVD 14のリリースにあわせ、サイバーリンクでは独自のクラウドサービスであるサイバーリンククラウドを提供開始した。特徴は、動画・写真・音楽に特化した点にある。

図11 サイバーリンククラウド

Ultra版には、1年間で10GBの使用権が付く(別途、購入も可能)。具体的には、PowerDVDで作成したプレイリストをサイバーリンククラウドにアップロードし、モバイルデバイスに同期させるといったことができる。さらに、Webブラウザ経由でもアクセス可能である(図12)。

図12 Webブラウザからアクセス

サイバークラウドへのアップロードの際には、自動変換&トランスコードが行われる。具体的には、PCのPower DVDからコンテンツをアップロードする場合、モバイルデバイス向けに変換される。たとえば、動画ならばHD(720p)に、写真ならばJPEG形式で4メガピクセルに、音楽データならばAAC形式で256kbpsに変換される。品質はやや低くなるが、通信帯域と保存容量の節約となる。さらに、互換性の維持も必要である。