ドワンゴと文藝春秋は2日、共同記者会見を開催し、動画サービス「niconico」にて、『週刊文春デジタル』の配信を開始すること発表した。
配信プラットフォームは、niconico内のブログ&メールマガジン機能「ブロマガ」を使用する。購読価格は月額864円で、最新号を含む過去5冊分の特集記事を読むことができるという。配信日時は『週刊文春』発売日の毎週木曜の5:00となる。
なぜ週刊文春がネットでの記事配信に乗り出すのか。そして、なぜプラットフォームとして選んだのがnicoincoのブロマガだったのか。2日に行われた記者会見の内容から読み解いていこう。
発表会に登壇した文藝春秋常務取締役の西川清史氏は、自身が週刊誌の現場にいた1970~80年代を振り返り、ネット配信に挑戦する理由を次のように語っている。
「当時は週刊文春の発売日に国電(※現JR)に乗ると、車両の中に2、3人は週刊誌を読んでいる人がいた。その人数が多いか少ないかで、その号の出来不出来を判断するバロメータになっていた。昨今、電車の中で週刊誌を手にとっている人はほとんど見当たらない。何をしているかというと、スマホでパズドラなどのゲームをやっている。そういった人たちに週刊文春のコンテンツを突きつけたいと思った」
週刊文春をデジタル化する上で、文藝春秋がプラットフォームに選んだのは、niconicoの「ブロマガ」だった。「ブロマガ」とは、ブログとメールマガジンの要素を併せ持ったプラットフォームだ。月額課金による定期購読モデルの他、都度課金にも対応。文字だけでなく、動画や生放送などでコンテンツ配信することもできる。現在の購読者数は約13万人。ドワンゴ川上会長によると「正直、少ない数字」だというが、「これまでネットでお金を取ることは難しかった」ことを考えると一定の成果であり、「これからユーザーのリテラシーが変わっていけば購読者数は増えていくだろう」という。
週刊文春がそんなブロマガをデジタル化のプラットフォームに選んだのには、以前にニコニコ生放送で芥川賞の会見中継を行ったり、川上氏が「ジブリ見習い日記」を週刊文春に連載していたりという縁があった。加えて、「ブロマガで週刊誌の記事を配信するのは初めての試み。トライしたい」という西川氏の思いもあったという。
「月刊の文藝春秋は3年くらい前からデジタル化を進め、電子雑誌という形で電子書店で販売している。そちらは読者がやってきてダウンロードするというプル手法だが、そうではなくメールで届けるというプッシュ手法にしたとき、週刊誌がどのように世の中に受け入れられるか見てみたかった」
こうしたデジタル化に積極的に取り組む裏には、昨今の出版不況が大きく影響している。西川氏によると、現在の週刊文春の発行部数は約70万部。週刊新潮や週刊現代、週刊ポストといったその他の週刊誌もだいたい50万部前後で推移しているという。ピーク時には90万~100万部売っていたことを考えると、週刊誌業界の苦境は明らかだ。西川氏はそんな現状を「デジタルの力で支えたい」と意気込む。