そして、2014年度の経営目標を売上高7兆7,500億円、営業利益3,100億円と置き、「中期経営計画達成への基盤を固める年であることと、2018年の新しいパナソニックに向けた成長戦略を仕込む年になる」と位置付ける。「中期経営計画達成に向けた道筋をつくる。この数字はなんとしてでも達成する」と津賀社長は意気込む。

一方で、事業軸においては、5つの事業領域でそれぞれに中期的な成長戦略を掲げるが、なかでも家電事業の2兆円に向けた取り組みがポイントとなりそうだ。

家電事業にとって売上2兆円の達成は容易ではない

現在、家電事業は売上高1兆8,000億円の事業規模を持ち、2018年度の2兆円達成を目指す、住宅事業が1兆3,000億円、車載関連事業が1兆1,000億円に留まっていることに比較しても、家電事業はもっとも近道にあるように見える。

だが津賀社長には、家電事業こそが売上2兆円という目標に最も遠い事業であると捉えているようだ。実際に現在、同じ1兆8,000億円の規模を誇るBtoBソリューションは、2018年度には2兆5,000億円へと大幅な成長を遂げると予測している。5つの事業領域のなかでは、今後5年間の成長率がデバイスに次いで低いのが家電事業というわけだ。

2018年度における各事業の売上高目標

4月1日付でテレビやBDレコーダーなどの事業を白物家電を担当するアプライアンス社に統合する

外的要因の影響を受けやすく、利益率が低いという点でも、家電事業は今後の10兆円の目標のなかでは、慎重な成長戦略を描かざるを得ないといえる。

津賀社長は、家電事業におけるこれまでの課題として「スペック優先」「イノベーション不足」「他社の後追い」「日本市場偏重」という要素を挙げながら、「現在の延長線上では将来を描くことが難しい。2兆円の目標達成に向けて逆算すると、家電事業を一元化することが最適だと判断した」とする。

4月1日付でAVCネットワークス社のテレビ、BDレコーダー、アクセサリー、海外コンシューママーケティングセンターといったコンシューマ事業を、白物家電を担当するアプライアンス社に統合。新アプライアンス社として家電事業を一元化する。2018年度の家電事業2兆円達成に向けて、現行のカンパニーや事業部の枠組みを超えた戦略立案と実行し、新体制により、製販連結による強い商品の創出や、家電事業トータルでのリソースの最適活用を図るという。

「白物家電事業は、それぞれの地域の生活に密着した形で事業を展開してきた。その反面、グローバルなコスト競争力に課題があった。また、日本向けの付加価値製品が中心となっていたという課題もあった。これに対して、AVCネットワークス社のデジタル家電事業はグローバルに事業を展開しており、グローバルで戦える人材も備えている。この2つの事業が入り交じることで、新しい強みを生み出せる。掛け合わせによって、競争力のある新たな家電事業を作る」と宣言する。

また、国内家電事業においては、「日本か世界かを問わず、より地域に密着してその地域に求められる製品を提案していくことは共通である」と前置きしながらも、「日本で求められているものは、高齢化へ対応することであるとともに、モノがあふれているなかでより感性に訴えることができる商品だ」と分析。「従来のように機能、性能だけで勝負をしていくというだけでは新しい家電にはならない。従来はグローバル指向と技術指向が中心だったが、より国内にフォーカスした方向に向かっていきたい」とする。

ロボット掃除機では大きく出遅れた

では新たな家電製品はいつから登場するのか。津賀社長は、「早いものでは2014年から登場するものもある」とし、「AVCネットワークス社とアプライアンス社の若手を中心としてワーキンググループを作り、何を変えていくのかを議論し、家電事業を見直す活動を進めている。人材の入り交じりによる成果にも期待している。」と取り組みを紹介。その上で「すでに白物家電にも、スマートフォン対応やネットワーク対応、あるいはディスプレイを搭載した製品が登場している。これからはより一歩進めて、融合したからこそできる製品を作りたい」とする。

この部分においては、「まだ具体的なものはない」とするが、「冷蔵庫はいまの冷蔵庫のままでいいのかという議論もひとつ。また、掃除機が大きく変化しているが、ロボット掃除機ではパナソニックは大きく出遅れている。なぜなのか。より大きなリソースが入り交じり、そこにフォーカスを当てれることができれば、パナソニックは、そうしたチャレンジングな製品を出せないわけではない。これまでのように、総花的に製品を揃えて展開するのではフォーカスが薄くなり、リソースを有効に活用できていないことになる。そうしたことも含めて、徹底的に見直す」と語る。 

パナソニックでは、2014年から「Wonders!」というキーワードという言葉を使いはじめている。「家電製品でもWonders!と胸を張っていえる製品を増やしていきたい。それに向けた努力をしたい」と語り、「もう少しすれば、きっとWonders!マークがついた製品を次々と出てくる。Wonders!と言われる製品が登場することを期待してほしい」と、津賀社長は力説した。

2018年に創業100周年を迎えるパナソニックは、その節目に10兆円の売上高を掲げる。その成長戦略を担うのは、BtoB戦略であり、売上高の8割はBtoBということもできる。その点では家電事業は、成長の主軸とは言い切れないだろう。

だが、全社規模での強い経営体質を作り上げるポイントは、家電事業を中心としたBtoC事業の体質強化といえる。景気動向やグローバル競争の激化に左右されない利益体質の構築は重要な課題であり、この基盤があってこそ、BtoBの成長を軸にした10兆円企業への仲間入りが可能となる。

グローバル戦略の「顔」としての役割を担う家電事業は、パナソニックにとって外すことができない事業であるのは明らかだ。そのなかで、どんな製品を投入することができるのか。そして、事業体質をいかに強化できるのかが、新たなアプライアンス社も求められる課題だといえる。