パナソニックが3月27日に発表した2014年度事業方針で、2018年度に売上高10兆円を目指す計画が示され、業界から関心を集めた。電機大手では、日立製作所が2015年度に10兆円の売上高を目指す中期経営計画をすでに打ち出しており、10兆円の大台を目標に掲げているのは日立に次いで2社目となる。過去の中期経営計画でも、10兆円という目標を打ち出していた経緯があるパナソニックだが、これまでにその大台を一度も達成したことがない。
1年の構造改革を通じて、売上が伸びれば利益が伸びる体制へと転換してきた
その理由をパナソニックの津賀一宏社長は、「過去に挑戦した売上高10兆円の目標が達成できなかったのは、売れば利益が落ちるという事業が含まれていたこと、また、伸びる事業と縮む事業が混在していたことがあげられる。この1年の構造改革を通じて、売上が伸びれば利益が伸びる体制へと転換してきたこと、何をやったら赤字になるのかということが理解できている点が異なる」と語る。
パナソニックは、2015年度を最終年度とする中期経営計画「CV2015」においては、売上高計画を公表せず、利益目標だけを掲げる利益重視の姿勢を強調していたが、今回の事業方針説明では2015年度の売上高目標値は明らかにはしなかったものの、中期的な視点からは、10兆円という目標を明確に示してみせたわけだ。
また、10兆円の道筋に向けて、いくつかの道標を示した点も特筆できる。これまで、2018年度の目標として、家電事業2兆円、住宅事業2兆円、車載関連事業2兆円というように、3つの柱となる事業については売上高目標を示していたが、これに加えて、「住宅・車載以外のBtoB」としてきた領域において、車載以外のデバイスとして1兆5,000億円、BtoBソリューションとして2兆5,000億円の売上高を目指すことを明らかにした。これにより、10兆円の画が明確に描かれることになった。
さらに、この5つの事業領域を「日本」、中南米を含む「欧米」、そして新興国による「海外戦略地域」の3つの地域軸とを掛け合わせた15個のマトリクスを設定。それぞれの分野のどこにフォーカスし、優先的に投資を進めていくのかという点を明確化した。
「これまでは『事業軸』を中心に進めてきた経営を、顧客により近い、『地域軸』からの逆算を加えた経営へと進化させる必要がある。このマトリクスの上で、どこに注力していくのかを明確にし、その領域において、戦う相手はどこかということを明確にする」と津賀社長は語る。
日本においては、住宅、車載、BtoBソリューションの3つの事業、欧米においては、車載とBtoBソリューションの2つの事業、海外戦略地域では家電、住宅、BtoBソリューションの3つの事業が、「2018年度の売り上げ目標と、現在の売り上げとのギャップが大きい領域」と位置づけ、「これらの領域では大きな挑戦が必要であり、ヒト、モノ、カネのリソースを大胆にシフトしていく」と語った。
なかでも、「特に成長余力が大きい海外戦略地域では、『脱・日本依存』をキーワードに、戦略地域事業推進本部を新設。この戦略地域事業推進本部長に、インド・デリーに駐在することになる山田喜彦副社長が就任し、全権を委任する。パナソニックにおいて、代表取締役が海外に駐在するのは初めてのこと。海外戦略地域の成長を取り込むことができなければ、パナソニックの成長はないという強い思いのもと、この地域での成長を実現したい」と語る。