しかし、それぞれの要素が独立して配置されていて、身体が位置を覚えるのには慣れが必要。また、シャッター速度とISOダイヤルはボタンを押しながら回すロック式なこともあって、ファインダーをのぞきながら操作するのは非常に難しい。特に左側にあるISOダイヤルは、レンズを支える手を持ち替えないと操作できない。

さらに、ISOダイヤルの下にはドライブモードのリング状スイッチがあり、シャッター速度ダイヤルの下には測光モード切替のリング状スイッチがあるという2段の構成。このレバーが小さく、操作スペースも狭いので、慎重に操作しないと回しすぎてしまうなど、これが小さなストレスになる。

軍艦部にひしめく目盛りと数字。数値の基準線が横と下にあり、わかりにくい

ダイヤルとリングスイッチで基準線が異なる必要はないのでは?

したがって、撮影環境の変化に応じてとっさに設定を変更して……というより、撮影設定をじっくりと検討し、ダイヤルやスイッチをひとつひとつ回して「画を追い込んでいく手応え」を堪能しながらシャッターを切る、そんな撮影がX-T1には向いている。楽しくも贅沢な撮影プロセス。それもX-T1の魅力のひとつなのだ。

なお、臨機応変に設定を変更して撮影したい向きには、プログラムシフトの利用がオススメ。フルオート(プログラム)状態でフロントコマンドダイヤルを回すとプログラムシフトとなり、露出を保ったまま絞りとシャッター速度の組み合わせが変わる。操作性の救済策は、ちゃんと用意されているのだ。

シャッターボタン下のフロントコマンドダイヤルは、プログラムシフトで活躍する

背面のQボタンを押すと設定を一望でき、ここからダイレクトに設定変更を行える

撮影装備として魅力なのは、なんといってもファインダーだろう。メーカーが世界最大を謳う0.77倍、236万ドットの高精細有機ELを採用、表示タイムラグは驚異の0.005秒。早い話が、ほぼタイムラグは感じないということだ。実際、普段光学ファインダーのカメラを使う筆者でも、太陽光下ではEVFであることさえ忘れそうなほどだった。

だが、そんな高性能EVFでも、依然として蛍光灯下ではフリッカーが出たり、暗所ではノイズが出て描画速度も低下する。また、コンティニュアスAF時において、フォーカスが動いている間、ファインダー像がモヤモヤとぼかしフィルターのように動くのも違和感がある。もっとも、これらはX-T1がどうというよりEVFの弱点なので、それを認識して使用すればいいと思う。

標準的な撮影モードビュー表示

モニターに表示したい要素・情報をカスタマイズできる

AFスピードに優れる位相差AFと暗いシーンに強いコントラストAF、2つのAF方式をシーンに合わせて自動的に使い分ける「インテリジェントハイブリッドAF」の完成度も高い。実際、室内や低照度でも驚くべきAF精度を誇る。AF追従しながら8コマ/秒の連写能力も、必要とする人には心強い武器だろう。

AFと同時に、MFモードの充実度も見逃せない。フィルム一眼レフで採用されていた中心部の円でピントを合わせるスプリットイメージをEVFで再現した「デジタルスプリットイメージ」や、被写体のコントラストが高い部分を強調表示してピントを合わせやすくしてくれる「フォーカスピーキング」を搭載。やはりX-T1は、古き良き時代の一眼レフの撮影スタイルをデジタルカメラで再現したカメラなのだ、とあらためて感じる。