AppleのTVビジネス参入は過去に何度も話題になっており、2012年末には鴻海/シャープらと共同でプロトタイプ開発という話をWSJが、また翌2013年3月にこんどは台湾Digitimesが4K TVでAppleが同ビジネス参入と報じている。過去に何度も指摘されているが、TVビジネスは競争が激しい割に市場のパイが小さく利益率も低いこと、そして単価が高いうえに在庫リスクが高いという、商品としては非常に扱いにくい部類のものとなっている。
また書籍の中でJobs氏が語ったといわれるように、スマートフォンに比べて利益率が低いにもかかわらず、買い換えサイクルは8年などと長く(iPhoneはおおよそ2年)、ビジネスとしてのうま味が少ないというわけだ。Apple TVも、現状のままでは単なる動画ストリーミングの"おもちゃ"的な領域を出ていないと指摘している。イノベーターとしての側面が注目されがちなJobs氏だが、同時に倒れる直前だったAppleを建て直せたのは現実主義な面とビジネス的な判断力から来るもので、「TVビジネスは危険」と認識していたのかもしれない。
事実、いまだ大手家電メーカーで突出してまともな利益を出せているところはなく、価格と品質でキャッチアップしつつある中国メーカーの足音に戦々恐々とする状況が続いている。Business Insiderも、Apple推奨アナリストで知られるPiper JaffrayのGene Munster氏の発言を自嘲的に引用しつつ、"AppleのTV"はまだ遠い状況にあることをそれとなく示唆している感じだ。果たして、Jobs氏亡き後、AppleがTV事業に直接参入する日はやってくるのだろうか。