3月16日(22:00~)からWOWOWで放送されるドラマW『埋もれる』は、第6回WOWOWシナリオ大賞受賞作を映像化した、一軒のゴミ屋敷を舞台に繰り広げられるヒューマン・ミステリー。大手食品会社に勤めながら自社の産地偽装を内部告発し会社を追われ、一人故郷に帰り挫折から這い上がろうとする主人公・北見を演じた桐谷健太に話を聞いた。

WOWOWドラマ『埋もれる』に主演する桐谷健太

――今回、北見という人物を演じられて桐谷さんが感じたことをお聞かせ下さい。

自分の中ですごく"正義感"にとらわれている人間で、確かに正義感は強いんですが「正義でないといけない」ということに縛られている分、固さがある。ただ、自己犠牲というか、そういう人がいないと歴史って変わらないとも思うんですよね。そうやって闇が暴かれて少しでも世の中が変わっていくだろうし。でも、当の本人にとっては後悔の塊でしかなかったり、消費者のためにやったつもりが自分が不幸になったり…。いろいろな面において固すぎて、だからこそ当たったら砕けてしまう人間、というのが彼に対する感想です。

――作品全体に関する感想はいかがでしょうか。

最初、脚本をいただいて読んだ時、社会派な作品かなと思ったんですけど、読んでいくうちにだんだん鳥肌が立って、最後すごくゾッとして読み終わったんですよ。そういうタイプの作品って今まであまりやったことがないし、ましてや主演をやらせてもらったことはすごい嬉しかったです。自分の中の正義を貫こうとした時、傷つくのは結局自分だったりする恐怖感や、周りから人がいなくなる絶望感を自分に置き換えてみたらどうなのかという"怖さ"が、この作品の中にはあると思います。作品全体を通して不気味と言うか、人間の怖さや奇妙な空気が流れています。

――ご自身の演技プランに関してはどうでしたか?

あまりにも強烈だったし、どんどんストーリーにのみ込まれていったので、どう演じようとかはあまり考えませんでしたね。クライマックスのあるシーンでは、自分が表した感情に自分でもびっくりしました。この作品の場合、変に俺のプランや道すじがあったりすると"埋もれない"というか。俺自身も演じながら北見と同じように埋もれていってもいいかな、と思いながらやってたところがありますね。

――今回の作品を手がけた吉田康弘監督とは、俳優デビュー作の『ゲロッパ!』(’03)以来のつき合いと聞きましたが。

昔、ヨッシー(吉田監督)と電話で「お互い、とにかく人生で『代表作』と呼べるようなものを1本でもいいから作らないといけない」という話をしたことがあったんです。確かに「あれに出てたよね」「あの役、好きだった」と言われることはあっても、やっぱり"代表作"って別格で、主演やらせてもらってから言えるような狭き門だと思うんですよ。そう考えると約10年前に同じような立場で出会った同い年の二人がこうして主演と監督で一緒に仕事出来るのは嬉しいです。

――逆に難しさや緊張感は?

心のどこかで「こいつ、あかんようになったな」って思われたくないという気持ちはありましたね。それは向こうも同じだと思うし。「あの時と一緒やん」とも思われたくない。そういう気持ちもあって「何も考えずにやろう」と決めたんです。下手に頭で考えてしまうと作為的な芝居になってしまうだろうし、彼が監督として自分をどう導いてくれるかという思いもありました。作品の98%くらいは僕が出ているシーンですが(笑)、演出も的確だったし、映画撮ってるような感覚で面白かったです。