対戦カードと展望
それでは第3回将棋電王戦の各対戦カードを見ていこう。今回のプロ棋士側の出場メンバーは前回よりも実績を重視した人選で、より手厚い布陣になっている。強敵を相手にした心境など、直前インタビューを交えて紹介しよう。
第1局 △習甦(開発者・竹内章)-▲菅井竜也五段
コンピュータ側のトップバッターを務めるのは習甦。プログラム名はShogi Using Evaluation Swarm Optimizer(評価関数群最適化)の頭文字をつなげ、そこに漢字を当てたもの。第2回将棋電王戦では阿部四段にクセを読まれ完敗したが、目先の強さを求めるだけの対策はきっぱりと捨てた。今回は事前提供への対策もなし。長所も短所もありのままに、コンピュータ将棋としての身の丈の強さをプロ棋士にぶつける。
――現在の心境は?
竹内氏:純粋に歴史的イベントを満喫したい、という心境です。想像を超える様々な演出も楽しみで、関係者の皆様に感謝しています。
――前回と比べての強さは?
竹内氏:評価項目を大幅に増やすことによって序中盤の形勢判断が正確になったと思います。一方、評価関数の計算コストが増えたため読みの量が減っており、読みが浅くなるケースがあります。
――振り飛車党の菅井五段が相手です。対抗形での得手不得手はありますか?
竹内氏:居飛車穴熊に組めれば一安心という印象は以前からあり、電王トーナメント5位決定戦の印象が強いせいか、銀冠でも結構良い将棋が指せる気がします。急戦になると、少し不安があります。
――当日の対局で注目してほしい点をお聞かせください。
竹内氏:前回にも増して将棋をあまり知らない人にも注目してほしいという思いがあり、プロ棋士が真剣に考える姿、開発者が情熱を持って臨む姿にも注目していただきたいと思います。
第2局 ▲やねうら王(開発者・磯崎元洋、岩本慎)-△佐藤紳哉六段
今回が将棋電王戦初出場となるやねうら王は、さまざまな独特の機能を搭載した出色のプログラム。将棋電王トーナメントでは、「勝ち」と結論が出ている局面に誘導して勝つなどで話題になった。事前提供対策として局後学習機能を備え、定跡データベースを更新することで「ハマリ」を防ぐ。開発者の磯崎氏のキャラクター性にも注目。
――今回はプログラムの変更ができない状況下での対局です。
磯崎氏:やねうら王には局後学習の機能があります。ですので、プログラムの変更ができないことはさほど問題ではないと思っています。
――当日の対局で注目してほしい点をお聞かせください。
磯崎氏:やねうら王に限らず、いまのコンピュータ将棋は比較的、一直線の斬り合いを目指す性質があります。勝つときは、激しい変化に踏み込んできて一手勝ちして、鬼神の如き強さを見せることもありますが、負けるときはわざわざ激しい変化に踏み込んできて、あっさり負けるということもあります。一直線の斬り合いを目指すのは、コンピューター将棋の強さであり、同時に弱さでもあるわけです。コンピュータ将棋は、そういう性質のプレイヤーなのだという視点で見ていただければ、より電王戦を楽しめるのではないでしょうか。……続きを読む