見栄えのよいレイアウトと印刷物を簡単に作れる「きまるスタイル」
そのほか、一覧表などの作成機能強化や、文書に貼り付ける写真の調整を行う写真フィルターの新搭載も特徴の1つだが、注目すべきは作成する文書に即したレイアウトを選択できる「きまるスタイル」である。文書作成時に、用紙サイズ、ビジネスや会報といった用途に応じたレイアウトを約380種類から選択すれば、適切に字間や行間を設定した書式で文書作成を行えるというものだ(図06~07)。
文書作成後の印刷を見越してレイアウトするのは、本来プロの仕事とも言える。しかし、この辺りの作業を数ステップで実行し、社内外文書などの完成度を高められるのは、素直に評価していいだろう(図08)。
同じく印刷後を考えて搭載された機能が「紙質背景」だ。文書の背景に任意の画像を指定することによって、編集時や印刷結果のクオリティを高めるという、考え方自体はとてもシンプル。例えば和紙風の背景画像を選択すれば、実際の和紙が手元になくても似た仕上がりを再現できる。印刷にはカラープリンタが必要となるため、印刷コストが増えるのはデメリットかもしれないが、このように一太郎2014 徹は、書類や文書作成に対する深いこだわりを感じさせる新機能を多数搭載している(図09~10)。
EPUB(電子書籍フォーマット)機能も強化
一太郎シリーズはEPUB(電子書籍フォーマット)を早い段階でサポートしてきたが、一太郎2014 徹でもEPUB関連機能を強化した。画面の大きさに合わせて表示を調整する「リフロー型EPUB」の出力時は、画像枠やレイアウト枠の画像化品質を改善し、冊子や書籍に必須となる奥付の出力を新たにサポートしている。電子書籍を作っているユーザー、そして実際の書籍のような品質を目指したいユーザーには、興味深い機能となるだろう。
さらに、EPUB形式やKindle/mobi形式で保存する際は、一太郎2014 徹のシート上で作成した「本の表紙」を、別画像として保存する機能を搭載した。Kindle/mobi形式での保存時は、最適化したEPUB中間ファイルを別ファイルとして出力することで、校正や単語置換などの編集作業を可能にしている(図11)。
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一太郎2014 徹は、全体的に前バージョンの機能を踏襲しながらも、かゆいところに手が届くような新機能を搭載し、既存の機能も向上させている。電子書籍に代表されるような、制作物への愛情とも言える心配りを感じる仕上がりだ。
ただし、多くの機能向上は行われたものの、「ATOK 2014」と同様に最小限のブラッシュアップにとどまったという見方ができるのも事実だ。改めて述べるまでもなく、一太郎シリーズは老舗ワープロソフトである。主だった機能や操作性はすでに実現してきているだろうし、ジャストシステムは老舗だからこそ、大胆な改革がためらわれるジレンマを抱えているのではないだろうか。そうした面でも今後のチャレンジを期待したい。
それでも一太郎シリーズを使っているユーザーにとっては、順当なバージョンアップとなり、日々の生産性を向上させるアプリケーションであることは間違いない。社内外文書や町内会報といった小冊子作成、とにかく何かしらの「文書」を作る機会が多い人、電子書籍にチャレンジしたい人にとって、一太郎2014 徹はベストチョイスの1つとなるはずだ。
阿久津良和(Cactus)