定番ワープロソフトであるジャストシステムの「一太郎」シリーズが、今年もバージョンアップした。今回のサブタイトル「徹(てつ)」は、最後まで物事をやり通すという思いを込めて、同シリーズが本来持つ機能をブラッシュアップし、さらなる高品質の文書を作成できることを目指して付けられたという。
その言葉が裏付けるように「一太郎2014 徹」は、文字や文章などワープロ上で作成した「結果」を重視した新機能が加わっている。異体字を通常の文字と同じく使える「IVSへの対応」や、人名/地名などで使われる文字を多数収録した「IPAmj明朝」の搭載、作成中の文書に見合ったレイアウトを選択できる「きまるスタイル」などを新たに備えた。
各新機能については後ほど触れるが、今回のパッケージも3種類のエディションが用意され、各エディションとも最新の日本語入力システム「ATOK 2014」を標準搭載している。
標準パッケージの上位エディションにあたる「一太郎2014 徹プレミアム」には、「字游工房フォント」10書体や、テキストを音声で読み上げる「詠太4」、ラスター系グラフィックスソフト「花子2014」、メールソフト「Shuriken 2014」、PDF作成や管理が可能な「JUST PDF 3」、三省堂の「新明解国語辞典 第七版」(for ATOK)、大修館書店の英和辞書「ジーニアス英和辞典 第4版」(for ATOK)と和英辞典「ジーニアス和英辞典 第3版」(for ATOK)などがセットに。
さらに「一太郎2014 徹スーパープレミアム」は、範囲をなぞるだけで手軽にスキャンをできる「一太郎マウス型スキャナ」、フォトレタッチソフト「Zoner Photo Studio 15 HOME J」、Microsoft Officeとの互換性が高い表計算ソフト「JUST Calc」、そしてプレゼンテーションソフト「JUST Slide」を同梱している。今回は「一太郎2014 徹プレミアム」をベースに、新機能の利点や使い勝手などを踏まえてご報告しよう。
人名や地名で必須の「異体字」を扱いやすく
一太郎2014 徹は、日本語ワープロに欠かせない文字への配慮を見せている。人名・地名を正しい漢字で表現するため、IVS(異体字セレクター)への対応を実現した。異体字を簡単に言うと、同じ意味や読みだが形状が違う漢字のこと。例えば「和」と「咊」は同じ構成要素ながらも配置が異なる異体字で、「涙」と「泪」なども思い浮かぶ人は多いだろう。このような異体字を、国際的な文字コードであるUnicodeで表現するために考案されたのがIVSである。
そこで一太郎2014 徹のIVS対応だが、日本各地で用いられている異体字の表現を大幅に強化した。以前のバージョンでもISVには限定的に対応してるが、今回はIPA(情報処理推進機構)の協力を得て、同法人製フォント「IPAmj明朝」を標準搭載。扱える異体字が約13,000文字から約58,000文字に広がっているという(図01~02)。
IVSへの対応は、他のアプリケーションと互換性を保つという面でも功を奏している。例えば前バージョンの異体字機能を用いた場合、一太郎シリーズ上では字形が維持されるものの、他のアプリケーションにコピー&ペースとすると字形が変わってしまっていた。図03の下段は古い異体字で表示させたものだが、注意を促すため下線が加わっている。
この状態でコピー&ペーストすると、図04のように字形が変わってしまうのだ。一方、上段の「葛」は新しい異体字を使っているが、Word 2013でも正しく表示されたことを確認できる。これがIVSに対応した最大のポイントだ(図04)。
なお、IVS機能はWindows 7 / 8 /8.1上で利用可能。もともとWindows 7はテキスト描画処理レベルでIVSに対応し、Windows 8はフォント(MS明朝/ゴシック)レベルで対応した。だが、前述のとおり一太郎2014 徹はIVS対応フォントとしてIPAmj明朝を標準搭載しているため、異体字を使う機会が多いユーザーは、標準フォントをIPAmj明朝に変更しておくとより使いやすくなるだろう(図05)。