タイプミスしても、推測変換で正しい候補を提示
ATOK 2014は、推測変換エンジンを磨き上げることで、タイプミス時も推測変換候補を列挙するように改善されている。例えば、「コンビニエンス」と入力したい場合にタイプミスをして、「こんぼにえ」と入力した時点で、推測変換候補に正しい名称が列挙されるというものだ。当初、筆者は推測変換機能は一部分しか使っておらず、同機能の改善に気がつかなかったものの、省入力データの「標準省入力データ」を有効にすることで動作した(図07~08)。
さらに、過去のバージョンで市町村の合併情報や省庁の名称変更に対応し、正しい名称を提示する「名称入力アシスト」(図09)が、上場企業の企業名にも拡張された(図10)。また、巷にあふれるカタカナ語本来の単語を、変換候補に列挙する校正支援機能もサポート。例えば「コンプライアンス」なら「法令遵守」、「スキーム」なら「計画」などを列挙するというものだ(図11~12)。
これらは入力内容によって動作する機能のため、いずれも「Tab」キーで実行する推測変換では動作しなかった。前述の例なら「コンプラ」だけではなく「コンプライアンス」まで入力しなければならない。ロジック的に仕方ないとは思いつつも、推測変換をよく使うユーザーが利用する場面は多くないと感じた。
そのほか、数値入力時に3桁ごとのカンマを自動挿入する「数値入力ナビゲート」が便利。変換候補の後ろには漢数字が提示されるため、入力ミスを防いでくれそうだ。実際に試したところ、「千」から「兆」の単位までサポートし、それより上の単位となる「京」には未対応だった。金額入力などのために実装された機能と察するが、筆者個人としては、バイト/メガバイト/ギガバイトといったIT用語にも対応してほしかった(図13~14)。
総じて見ると、ATOK 2014は確かに新機能や改善を伴い、使いやすくなっているのは確かだが、メジャーバージョンが繰り上がるほどの変化かと問われれば、答えに窮するのが正直なところ。とはいえ、これまでATOKシリーズを使ってこなかった方が、仕事でもプライベートでも文章の品質向上を求めて購入するのであれば、その性能や新機能は大いに評価できる。
今回のパッケージには、ATOKシリーズを定額料金で使用する「ATOK Passport」の1年間利用権も付属しており、クラウド辞書など様々なメリットが得られる。今後も高品質な日本語入力システムを使いたいユーザーなら、ATOK 2014のパッケージを入手し、今後も使い続けるか否かを判断できるよいタイミングだろう。インターネットにあふれる誤用などに惑わされず、より正しい文章を作成するための強力アイテムとなるATOK 2014は、これまでATOKシリーズ未体験だったユーザーにこそ試してほしい日本語入力システムだ。
阿久津良和(Cactus)