Macで創造する、というポジションが与えられた
コンピュータ体験のモバイル化は、Macにも波及している。薄型軽量で長時間バッテリーを特徴とするノートブック型のMacBook Airは、最も安いモデルを揃えながら、Appleが提供するMacでの体験をキチンと提供し、11インチで9時間、13インチで12時間という人間が根負けするほどのバッテリー寿命を実現している。
Retinaディスプレイを搭載するMacBook Pro、そして前述の一体型デスクトップマシンiMac、非常にシンプルにMacを導入できるMac mini、そしてハイエンドの性能を斬新なデザインで提供するMac Proというラインアップだ。
Appleが作り出したiPhone、iPadの世界に翻弄されるPC市場で、Appleも台数の面では成長のペースを停滞させてしまう結果にはなっているが、AppleはMac全般を「よりクリエイティブな作業を行うための、何かを作り出すプラットホーム」という位置づけに据えているのではないか、と考えている。
AppleのMac 30周年を記念するビデオでも、Macがクリエイターや科学者、教育現場などで利用される姿が好んで描かれている。iPhone・iPadに無料で提供されるiLifeシリーズで自分でコンテンツを作る楽しみを覚えたら、Macでより本格的に取り組む。そんな体験の流れが出来上がってきているのではないだろうか。
Appleが、スマートフォン、タブレットの姿を規定したからこそ、Macのポジションを明確に位置づけることができた。裏を返せば、AppleがiPhoneを作らなかったら、Macの現在は非常に暗いものになっていたかもしれない。
松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を追求している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura