• ヒント3「話しかけて相手の表情を引き出す」

人に話しかけて撮る場合は、精一杯の笑顔で接し、自分で何者であり、なぜ写真を撮るのかを説明します。大げさな理由は必要なく、たたずむ姿が絵になるとか、服装がチャーミングであるとか、実際に感じたことをストレートに伝えるだけで十分でしょう。とにかく大切なのは、相手の警戒心を解くことです。

私自身、自慢できるような語学力はありませんが、写真を撮っていいですかといった基本フレーズは丸暗記した現地の言葉で喋るようにしています。それから先はつたない英語です。こちらが無害な旅行者であることが伝わると、多くの人は笑顔を返してくれます。さらに一歩踏み込み、無難な笑顔だけでなく、シリアスな表情も撮れれば御の字です。

絞り優先AE(F5.6、1/400秒)、露出補正:±0.7、感度:ISO400、WB:オート、焦点距離:50mm相当(写真をクリックすると拡大します)

  • ヒント4「撮りやすい雰囲気の場所を探す」

旅先で人物スナップを撮る場合、場所によって撮りやすいか撮りにくいかに差が生まれます。もっとも撮りやすいと私が感じるのは、公園や行楽地、海辺、川沿い、競技場、イベント会場など。つまり、多くの人が集まり、くつろいでいる空間です。座ってお弁当が食べられるような場所と言い換えてもいいでしょう。

こうした大勢の人がオフの時間を楽しんでいる場所では、絵になる人やシーンが見つけやすい上に、撮影許可ももらいやすいといえます。特に初めて訪れる国や地域では、まずは休日の公園などの比較的撮りやすい場所をめぐるのがお勧めです。

絞り優先AE(F9、1/250秒)、露出補正:±0、感度:ISO100、WB:オート、焦点距離:28mm相当(写真をクリックすると拡大します)

  • ヒント5「その土地ならではの風景を写し込む」

せっかく日本とは異なる場所を訪れたのなら、人物の背景には、その国や地域が分かる風景を写し込みたいところです。そのためには、レンズは望遠よりも広角、ズームの場合はテレ側よりもワイド側で撮ること。広角レンズで近寄って撮れば、人物を大きく捉えつつも、その背後の風景を広く写し込むことができます。

といっても、有名な景勝地や観光スポットに限りません。何げない都会の片隅や、名もない田舎の風景であっても、外国ならではの独特の雰囲気が漂う場所はいくらでもあります。

人物スナップの場合、写真の主役は風景ではなく人物です。背景は人物を引き立てるための舞台、と考えて場所を選び、カメラポジションやカメラアングルを決めるといいでしょう。

絞り優先AE(F4.5、1/800秒)、露出補正:±0、感度:ISO200、WB:オート、焦点距離:35mm相当(写真をクリックすると拡大します)

今回掲載した写真はすべて標準ズームレンズを使用。旅の人物スナップに特別な機材は必要ありません

「一歩上ゆくデジカメ活用術」バックナンバー
第1回 イルミネーションを利用してボケのある夜景写真を撮る
第2回 冬の逆光を生かして印象的なスナップショットを撮る
第3回 水族館の生き物たちを幻想的なイメージで撮る
第4回 夜空に浮かび上がる満天の星を撮る
第5回 単焦点レンズで楽しむポートレート撮影・表情編
第6回 単焦点レンズで楽しむポートレート撮影・背景編
第6回 単焦点レンズで楽しむポートレート撮影・背景編
第7回 単焦点レンズで楽しむポートレート撮影・焦点距離編
第8回 紅葉を美しく撮るための5つのコツ
本連載では、取り上げてほしいテーマを募集しております。ご連絡の際は、編集部のお問い合わせ窓口までお願い致します。