■岡田「雨宮さんのことを勝手に心配するな」
岡田「いやでも本当に、私はね、『おまえら雨宮さんのことを勝手に心配するな』って、世の男性たちに言いたい!」
雨宮「心配されてますねー」
岡田「見下すか、哀れむか、以外の態度はとれないのかと! ついでに、私もまた『結婚したって、しなくたって、私は私だ』と言いたい……。陰で『裏切り者』とか『一脱けか』とか言われるんですが、いったい何を裏切ったというのか……」
雨宮「私が独身で、岡田さんが結婚したからって、勝手に接点がなくなったみたいに思われるの、ちょっと腹立つ。私と岡田さんの仲を勝手に引き裂かないで!」
岡田「『嫁つも』で書いたとおり、私はずっと独身でいるつもりだったし、結婚を伏せておこうかと迷ったこともあったんですよ。それから、編集部には当初『大事なことは全部、雨宮さんがもうお書きになってるじゃないですか』と言ったりもした。でも、結婚している読者から『悩みすぎじゃない? そのうち落ち着くもんだよ』と言ってもらえたり、年若い読者から『こういう結婚ならしてみたい』『自分も結婚できる気がしてきた』と感想をもらって、私自身、妙な強張りが取れたというか……。雨宮さんが書いてくれるからいいじゃん、という態度じゃなくて、『した側』からも書かせてもらった甲斐があったなぁ、と思いました」
雨宮「私は岡田さんが結婚すると聞いたとき、すごく希望が持てた。『結婚したい』と言うと、結婚に適した女に見せかけるためにいろいろ隠せとか体裁を取り繕えみたいなことをよく言われるんですけど、岡田さんはミュージカルのAプロとBプロ両方行って、さらに遠征とかしてて、そんなふうに何も遠慮せず好きなことをしていても、結婚を申し込まれたんだ! と思ったら、人生っていいなという気持ちになりました」
岡田「(笑)。ちなみに、私がすごくモヤモヤした感想は、『岡田さんのあの連載を読んで、本気で婚活を頑張ろうと思いました!』という若い女の子」
雨宮「なんか違う」
岡田「うん、どうコメントを返していいのか……いや、彼女の望む幸福への近道が明確になったのなら、それはそれでいいんですけどね……。私は別に、結婚は大変よいものだから全員がするといい、と主張する人間でもないし、婚活へのアドバイスになるようなことは何一つ書いてないので、参考にして大丈夫かなって」
雨宮「婚活も最終的には同じで、私は岡田さんが結婚したときに、岡田さんが岡田さんらしく輝いていたことによって、岡田さんをすごく好きになった人がいて、それで結婚したってすごくいい流れだったと思うんです。やっぱりその人がその人らしく楽しく生きていて、それが魅力的だってことが一番いいことだと思っているから。婚活にせよ、やっぱりどこかで、『この人と結婚したい』っていう魅力がなければ難しいじゃない。一緒にいて楽しいって。だから、自分が楽しいことをやって、そのことで異性をひきつけることができれば……って、今言いながら大丈夫なんだろうかって思ったんだけど、それが一番理想の形ですよね」
岡田「そうですね。私は、自分から積極的に活動したり、何か努力を積み重ねたりして結婚したわけではないので、そこに関しては何とも……。まぁ、理想の結婚をするぞと決めるにせよ、結婚への焦りに惑わされずに生きるぞと決めるにせよ、そのプロセスを楽しめることが一番ですよね。転んだら転んだでそれもまた楽しい、という、ちょっと軽い気持ちになる、そのくらいのお役に立てたら、としか言えないですけど」
雨宮「そうですね。自分のことを理解してもらうために書いているというよりは、どなたかのお役に立てたらと思いますね」
■『女子をこじらせて』を5回読んだのは……
岡田「最後に、ちょっと話がズレるんですけど……。うちの夫のオットー氏(仮名)、結婚する前に私が雨宮さんの『女子をこじらせて』を激賞しているのをTwitterか何かで見て、自分で買って5回くらい熟読した、っていうんですよ。今も雨宮さんの大ファンで、『あの本で、こじらせ女子というものの生態について研究させていただきました。大変勉強になりました』と常日頃から言ってるので、これは是非お伝えしておかねばと」
雨宮「えっ!!! 初耳。それは嬉しいですねー。私もそういうことやります、相手のツイログとかをめっちゃ読んで、その人の座右の銘みたいな本とかこっそり読んでおいて、『私もあれ好きなんですよ』じゃなくて、会話の流れで『あの本いいと思ってるんだよね~』ってさり気なく出して。『え、あれ好きなの?』と食いついてくると、『来た来た来た!』って」
岡田「『オタク趣味全開で、好きな仕事を続けていて、結婚したーいと口では言いながら、恋愛をする気配はまったくなく、モテてるのかモテてないのかもよくわからない、君みたいな女の人たちが何を考えて日々を生きているのか、全然知らなかった。でも、まみさんが書いてくれたおかげでやっと分かったんだよ!』みたいなこと言ってましたね。こじらせ女子という名称ができたおかげで、そここそが自分のストライクゾーンなんだと気づいた男もいる、ようです」
雨宮「いやー、今なんか世の中の役に立てたって感じがすごくする」
岡田「『俺はめんどくさい女が好きなんだって気づいたんだ!』って晴れがましい顔で言われて、リアクション困りましたけどね……。だから、世の男子たちももっと『女子をこじらせて』なり『ずっと独身でいるつもり?』なり読んで、我々のことを研究するといいですよ。それで『こういう女の人たちも嫌いじゃないかも』と少しでも思ったなら、それを表明していると、あちこちでいろいろな出来事が起きて、うっかりみんなが幸せになったりするんじゃないかなって気持ちを、今日は、伝えたかったのです!」
雨宮「私たちは別にね、舞台に夢を見ているけど、舞台の上にいる架空の人たちと結婚したいわけではないんですよね」
岡田「そうなんです、二次元は別腹なんです。だから男性のほうも、自分で自分の視野を狭めないでいただきたいですね。理想のお嫁さん像なんてブラックホールみたいなもので、いくら手を伸ばしても実体はありませんから。吸い込まれるだけですから。その周縁で、いろいろな生き方をしている女性が、星の数ほどいますからね。知ってみれば、それも悪くないかも、っていう気持ちになったりとか」
雨宮「優しい目で見てほしいですね」
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『SPRiNG』『宝島』などで連載中。
岡田育
1980年東京生まれ。編集者、文筆家。主な生息地はTwitter。2012年まで老舗出版社に勤務、婦人雑誌や文芸書の編集に携わる。同人サークル「久谷女子」メンバーでもあり、紙媒体とインターネットをこよなく愛する文化系WEB女子。「cakes」にて『ハジの多い人生』連載中。CX系『とくダネ!』コメンテーターとして出演中。2013年春に結婚。
構成: 飯田樹