普通に暮らしていたら、まず接することのできない古本の仕入れ。仕事旅行なら体験できる

「仕事旅行」という言葉を知っているだろうか。まるで知らない土地へ旅行するように、神主、カメラマン、憧れの仕事や興味のある仕事を1日だけ体験できるサービス。仕事旅行社が主催し、現在注目を集めている。

今回伺ったのは、古本屋での仕事旅行だ。古本屋といえば、店頭で本の売買をしているイメージが強いが、実は野菜のように「市場」に商品を仕入れに行くことがあるという。本の市場に行ってこれぞと思うものへ入札し、仕入れ、店頭で売る。ふだんのイメージとは違う古本屋の仕事を体験できるのだ。案内してくれたのは鎌倉の古本屋books moblo店長の荘田さん。神奈川県古書会館へ、早速本の仕入れにGo!

本の山の中から、自分の店にあった「お宝」を探す

神奈川県古書会館。地域によってハイテクなところもあれば、昔ながらのやりかたのところもあるそうだ

各地域にある「古書籍商業協同組合(古書組合)」は古本屋さんが集まってできている。ふだんの店舗でお客さんから買った本は、すべてが自分の店の色にあっているわけではない。自分の店に置かないタイプの本が、他の店の人にとってはお宝である可能性もあるし、その逆も然り。それぞれが自分の店で仕入れた本を出して、ほしい本を仕入れる。「米を売って大根を買う感覚ですね」と荘田さん。

所狭しと積まれた本の山・山・山…10冊~数十冊で束になっているものを、丁寧に見ていく。たとえ1冊だけが欲しくても、束すべてを引き取らなくてはならないそうだ。我々が良く知っているようなコミックや小説、写真集だけでなく、巻物や広告ポスター、羽子板やゲーム、焼け焦げた戦前の書類など、「これも古本屋で扱っているの?」と驚いてしまう。基本的に束単位の取引となるので、持ち帰ってからほしい本を抜いてもう一度放出してしまうこともあるそうだ。

こんな巻物も…

行ったり来たりしながら、掘り出し物を探す

検索は厳禁! 自分の目を頼りに

本の束には封筒がついており、ここに自分が決めた価格を書いて入れる。もちろん仕入れ値なので、いくらで売って利益を得るか、束分の本について考えて付けなければならない。組合の方が開封して、一番高い値をつけた店が買い取ることになる。「落札された値を見て、あと10円高く入れておけば…と後悔することもしょっちゅうです(笑)」(荘田さん)

束についている封筒に

自分の入札価格を書いて入れる。あとは開示を待つ

「仕事旅行」参加者もbooks mobloのスタッフとして実際の入札に参加できるという。簡単そうに言っているが、実際に本の山を前にすると、これは果たして価値のあるものなのか、ほしい人がいるのか、堀り出しものなのか、さっぱりわからない! 「目利き」としての知識や、「自分のお客さんが買ってくれそうかも」という先読み力が必要となりそう。古書会館の中では「インターネットでの検索禁止」だそうで、頼るのは自分の力しかないのだ。何という燃える世界。

鎌倉の古本屋books moblo店長の荘田さんが優しく導いてくれる

またここでうまく欲しい本を買えたとしても、実際に店舗に出したときに買ってもらえなければ意味がない。ピンポイントで欲しがりそうな人がいる本、多くの人に人気が出そうな本、店に常備しておきたい本…いけると思っても全然売れないことがあったり、思った通りに本が売れたり、何となくイメージしていた「古本屋」の仕事とはまた別の面が見えてくる。1日の体験で、かなり見方が変わるのだ。実際にこの体験を企画している仕事旅行社さんに話を聞いてみた。