世界に発信していきたい

記者会見では、はじめに東レ 繊維事業本部機能製品・縫製品事業部門長の首藤和彦氏が登壇し挨拶した。"hitoe"のネーミングには、human(人間)、intelligence(情報・知能)、to(~の方へ)、expand(拡張する)といった想いを込めたという。また、単衣(ひとえ、一枚の布)といった機能性も象徴させている。首藤氏は「今後、国内はもとより海外に向けてもライフ、カルチャー、ヘルス、スポーツ、フューチャーといったあらゆる分野において、hitoeを使った技術を発信していきたい」と語った。

東レの首藤氏は「日本企業の技術の高さを世界に向けて発信していきたい」と意気込む(写真左)

東レテキスタイル・機能資材開発センター所長の桑原厚司氏は、技術に関する説明を行った。通常の衣料では、繊維の太さは15ミクロン程度。しかし今回のウェアでは、さらに細い700nm(ナノメーター)の繊維を使った。これによりウェアと肌との接触面が増え、その結果、導電性を向上させることに成功した。また通常であれば、洗濯などにより表面の樹脂が剥がれると導電性が失われる。これを考慮し、ナノファイバーを使って繊維束の中に樹脂を入れた。これにより耐久性の課題も克服したという。このほか東レの「着圧制御素材設計」技術により、肌への密着性が上がった。多少サイズが違っても適度に伸びるため、「様々な体型の人に着ていただける」(桑原氏)とのことだ。

登壇する東レの桑原厚司氏(写真左)。ナノファイバーを使い繊維束の中に樹脂を入れてウェアを作成した

将来はメンタルの分野にも応用

次にNTT 先端技術総合研究所 所長の村瀬淳氏が登壇し、生体情報計測用ウェアの開発過程について紹介した。同社では保湿性の維持/ 発汗によるショートの防止/ 高品質に信号を検出するための電極の配置/ 着脱が容易になる端末コネクタ、の4つのポイントを最大限に配慮しウェアの開発を進めたという。心拍数・心電波形を可視化した具体例として、バドミントンをしている際の心拍数変化を調べた事例がスライドで紹介された。将来的には、ストレスの状態やリラクゼーション、睡眠などメンタルの要素が強い分野にもhitoeの技術を応用していく方針だ。

登壇するNTTの村瀬氏(写真左)。バドミントンの上級者と初心者で、心拍数の上がり方・下がり方が異なる様子を可視化した(写真右)

ドコモ・ヘルスケアと連携

NTTドコモではhitoeの技術を応用したウェアラブル製品を使い、ドコモ・ヘルスケアの健康プラットフォーム「WM(わたしムーヴ)」と連携していくことを考えている。登壇したNTTドコモ執行役員ライフサポートビジネス推進部長の中山俊樹氏は「日常生活の中で、さりげなくスマートフォンと連動し健康を見守っていくような、新しいサービスの提供を目指していく」と語った。同社では2014年中のサービス提供を目指し、開発と設計に取り組んでいる。

NTTドコモの中山俊樹氏は「ほかのウェアラブル端末との連携も考えていきたい」と語った(写真左)。健康以外の分野へも技術を応用していく