物静かな落ち着いたパン職人-「しあわせのパン」
「しあわせのパン」は北海道・洞爺湖のほとりにある小さな町・月浦を舞台にした心あたたまる物語。宿泊設備を備えたオーベルジュ式のパンカフェを営む夫婦と、その店を訪れる人々の人生を、春夏秋冬を通してゆったりと描き出していく。映画では季節ごとに違う物語が展開され、北海道の雄大な景色と見るからに美味しそうな食事のシーンを楽しむことができる。
パンカフェのオーナーである水縞夫妻の妻・りえを演じるのは原田知世。そして、その夫である尚を演じるのが大泉洋だ。
最初から最後まで静かな空気感に包まれた映画で、大泉洋演じる尚も物静かな落ち着いたパン職人である。グッモーエビアン! から続けて見れば、とても同一人物には思えないだろう。
物語の冒頭、大泉洋が窯をのぞきこむ。そこにはおいしそうなパンが焼けている。パンを手にお店へと姿を見せる大泉洋。にっこりと笑顔を見せながら、「カンパーニュが焼けました」と一言。どんな役でも自分のものにしてしまう大泉洋のすごさが、この冒頭のシーンに詰まっている。
大泉洋のすごいところは、役によってまったく違う表情・話し方を見せながらも、それでいてしっかりと"大泉洋であること"だ。俳優には2種類あって、役に自分を合わせていくタイプと、自分に役を引き寄せるタイプがいるが、大泉洋はどちらでもあり、どちらでもない。それはきっと、大泉洋の中に無数のキャラクターが存在しているからなのだろう。これこそが大泉洋の俳優としての懐の広さであり、彼の魅力の源泉なのだ。
「地の塩」での役どころは?
そんな大泉洋が、また新たな役に挑戦しようとしている。WOWOWで2月16日からスタートする連続ドラマW「地の塩」(第1話無料放送)である。
「地の塩」で大泉洋が演じるのは、勤勉で人望が厚い考古学者。詳しくはこちらをご覧いただきたいが、彼が発掘作業の中で偶然人骨を発見し、これがきっかけで社会を大きく揺るがす事件へと発展してしまう――というストーリー。
脚本は連続ドラマW「パンドラ」シリーズをはじめ、数々のヒット作を手がけてきた脚本家・井上由美子が担当している。ドラマには珍しい考古学を題材に、捏造問題、未解決事件などが複雑に絡み合うヒューマンミステリーだ。
「グッモーエビアン!」の破天荒な自由人でもなく、「しあわせのパン」での穏やかなパン職人でもない。歴史を覆す大発見をした勤勉な考古学者という、これまでとはまた違ったキャラクターを大泉洋がどう演じるのか。「地の塩」で見せてくれるだろう熱演が今から楽しみだ。