Atomで99ドルの低価格を実現したスマートフォン「Zenfone」

そして今回のもう一つの呼び物は、IntelのAtomプロセッサを搭載したAndroidスマートフォン「Zenfone」シリーズだ。画面サイズ別に4インチのZenfone 4、5インチの同5、6インチの同6の3モデルが用意され、それぞれ価格は99ドル、149ドル、199ドル。特にZenfone 4の99ドルにはインパクトがあり、価格が発表されると発表会場に詰めかけた報道陣からも驚きの声が上がった。

99ドルという価格のインパクトが大きかった「Zenfone 4」

Zenfoneシリーズには、ToDo管理・リマインダなどの機能を統合した「ZenUI」を搭載

Zenfone 4と5/6とでスペックに差があり、Zenfone 4はAtom Z2520(1.2GHz)、800×480ドットの液晶ディスプレイ、500万画素のカメラを搭載する。これに対してZenfone 5および6は、Atom Z2580(2.0GHz)、1280×720ドットの液晶ディスプレイ、800万画素・F2.0のカメラを搭載している。OSのバージョンはAndroid 4.3(4.4へアップデート提供予定)で、LTEには対応しないが、スマートフォンとしての基本性能は十分で、プラスチック外装なものの安っぽさは感じさせない仕上げとなっている。

Zenfone 4のサイズは124.4×61.4×6.3~11.2mm。最厚部が10mmを超えているが、フレーム部分は薄くなっているので手に持った印象ではそれほどの厚さは感じない

ASUSはAtomを搭載した7インチタブレット「Fonepad」を昨年249ドル(日本市場では29,800円)で発表し、低価格とIntelプロセッサのパフォーマンスを売りにする戦略を打ち出したが、今年はZenfoneの投入で、スマートフォンのカテゴリにおいても格安機種を導入する格好となる。

同社はノートPCでは実績があり、Ultrabookの人気シリーズ「ZENBOOK」をはじめとして競争力のある商品を有しているが、スマートフォンのメーカーとしては存在感が小さく、各国の通信事業者での採用例もあまり見られなかった。Zenfoneは、価格のインパクトでこの状況に風穴を開けようとするものだが、この価格を実現できたのはASUS自身の企業努力に加え、Intelプラットフォームに深くコミットすることで同社の後押しを受けていることが背景にあると想像される。Atom搭載スマートフォンは当初新興市場向け機種で採用が広がる傾向にあったが、Zenfoneは北米市場にも投入される予定であり、Intelにとってもスマートフォン市場攻略の足がかりとなる機種と言えそうだ。

「SamXXXX」製品や「XXX One」といった機種よりもAtom搭載ZenfoneのほうがJavaScript、HTML5処理性能に優れるとしている

Intel最高幹部のひとりであるRenee James氏が登壇し、関係の深さをアピールした

一方、今回AT&T向けの新製品として同時発表された「Padfone X」は、QualcommのSnapdragonを採用しており、やはりLTE対応機種においてはLTEモデム機能を統合しているQualcommのプロセッサが製品設計上有利と見られる。特に3Gの通信品質があまり高くない米国では低価格スマートフォンにおいてもLTEの需要が高まる可能性があるが、現状のIntel製品ではその要求に応えることが難しい。現状Atomに肩入れしているように見えるASUSが、今後モバイル製品のラインナップをどのように整備していくか注目される。

今回ステージで発表された機種の中で唯一のSnapdragon搭載機。LTE機種では依然Qualcommが有利だ