「ニコニコ超会議2」より

――その一方で、安倍首相や石破氏が来場し、戦車に乗ったことで国内外から批判の声も上がりました。ただ、現地にいた身としては政治色はまったく感じなかったんですね。どちらかといえば現地のノリはお祭りに有名人が来たという感じで、いわばniconicoらしい悪ノリの延長という印象でした。

あそこにいた人からすると、自分で見た風景とマスコミの記事に温度差を感じたと思います。切り取られた一風景がマスコミに政治的に載ることで、政治色が入ってしまったわけです。たとえば自衛隊がブースを設けていましたが、政治的な目的はないんですよ。じゃあなぜブースを出すのかというと、「歌ってみた」などと同じで、自分たちの活動を知ってほしいという気持ちがあるからなんです。戦車を持ってきたのも、興味を持ってもらいたい、認知してほしいというピュアな感覚からなんですね。

実際、自衛隊の隊員さんからの反響も、たくさんの人に見てもらえてすごくうれしかったという声をいただいています。安倍首相が来場されたことに関しても、選挙のアピールの場所としてではなく、"クールジャパン"そのものが体現化された場所として「ニコニコ超会議」を認識してほしいし、その場で換気してほしいということから招致をかけたのです。ユーザーにとっても安倍首相が来るから見に行こうということではなく、自分たちが楽しんでいるところに安倍首相があいさつに来たということなんだと思います。

――赤字額も初回の4億円から8,000万円へと大幅に減額できましたね。

それでもまだ赤字ですけどね(笑)。「ニコニコ超会議」はイベント事業というよりは、ユーザーに対して意識喚起してniconicoを永続的に楽しんでもらうための感謝イベントに近いものです。ただあまりに赤字だとステークホルダーに怒られるので(笑)。せめてトントンにもっていきましょうということで、8,000万円まで減らすことができました。ただし、今後も積極的に収益を得るつもりはありません。もし儲かりそうなら、niconicoや「ニコニコ超会議」をより良くしていくために投資しようと思っています。そこから、まわりまわってプレミアム会員が増えるなどの形で貢献したいですね。

そういった気持ちをフローとして組み込めたのが超会議2でした。いわば"確立した年"だったと言えるでしょう。今後はこのイベントを継続するためにもノウハウを洗練していきたいと考えています。その成果が表れるのが2014年の「ニコニコ超会議3」になるでしょうね。

「第二回将棋電王戦」より

――そんな「ニコニコ超会議」とともに今年話題になったのが、コンピュータとプロ棋士が将棋で勝負する「電王戦」でした。

「電王戦」自体はその前からやっていましたが、世の中的にガチっと固まったのは2013年でしたね。関係者にも感動を呼び起こすドラマが生まれましたし、これまで将棋に関わってきた人たちですら没頭するようなイベントになりました。

――将棋のことがわからなくても楽しめたのがすごいことだと思いました。

より多くの人たちが、将棋や「電王戦」、プロ棋士について積極的に理解しようとしましたよね。特にコンピュータとプロ棋士が引き分けた4戦目はドラマでした。人間がプログラムの意表を突いて引き分けに持ち込むというドラマチックな出来事が起きたのは大きかったですね。niconicoでは将棋をずっと取り上げてきたのですが、その集大成になった年だったと思います。今後はさらにドラマを大きくしていかないといけないですね。

――2013年の話ではありませんが、大相撲を中継した年がありましたよね。将棋や大相撲など、niconicoは意識的に伝統的な文化を取り入れようとしているのでしょうか。

わざとそうしているわけではないのですが、面白いコンテンツを追求していくと、コンサバなものに行き着くという傾向はあると思います。日本人のDNA的に面白いと思うものを受け継いでいるのかもしれませんね。将棋もいわばリアルタイムシミュレーションゲームなわけで、そういう意味では「電王戦」はゲーム対戦ともいえるわけです。……続きを読む