―― EX-10の画作りについて、お話を聞かせてください。

松永氏「EX-10は、ターゲットユーザーの想定年齢層が30~40代と高めなので、それを考えて画質を設定しています。想定ユーザーが好む画質を考えて、全項目をブラッシュアップ、ものによっては最初から作り直している部分もあります。『プレミアムオート PRO』も鍛え直しました。

ちょっとマニアックな話になるんですが、『P』(プログラムオート)、『A』(絞り優先)、『S』(シャッタースピード優先)モードで、測光モードを中央重点にしてみてください。すると、ぐっと引き締まった画になります。プレミアムオート PROで写る画とは違って、面白いですよ。実は、これがEX-10の核となる画質なんです。この画を基準に、ノイズリダクションや色再現はもちろん、マルチパターン測光などの実装作業を行っています」

『P』(プログラムオート)、『A』(絞り優先)、『S』(シャッタースピード優先)、いずれかのモードで撮影すると、EX-10でベースとなる画質を知ることができるという

―― EX-ZR800やEX-ZR1100に比べて、EX-10は露出が控えめのような気がするのですが(暗めに写る)、どうでしょう? レンズの解像力が向上し、センサーも大型化とともに画素数を抑えることで、画素あたりの受光面積が大きく向上しましたよね。そこで、ディテールの情報をできるだけ生かせるように、露出を抑えているのかなぁと感じたのですが。

松永氏「そうです。実は以前のZRシリーズも露出は抑えめだったんですよ。でも、ここ1~2年のモデルでは、撮って出し(編注:何の編集も加えないこと)で使う画としては、少し露出を上げた方がいいんじゃないかという意見があって、少し明るめにしていたんです。

それをEX-10では元に戻した感じですね。また、今回初めて、RAW現像ソフトをバンドルしています。それを活用していただけるように、ディテールを生かす方向で露出を抑えめにした、という理由もあります」

プレミアムブラケティングのコンセプトは「この中に"これだ!"と思える1枚が必ずある」こと

―― では最後に、プレミアムブラケティングについて。「ホワイトバランス×明るさ」など、2軸のパラメーターを掛け合わせた9枚を連写してバリエーションを一覧表示してくれますが、この"振り幅"はどのように決めているのですか?

松永氏「これについてはキーワードがあります。それはスバリ『気持ち良さ』。明暗や色味が極端な画はあまり選ばれないと思うので、パラメーターの最上部と最下部は抑え気味にして、その間のボリュームからより多く選べるように振っています。『そうだよ、この写真、この色が欲しかったんだよ』という、気持ち良さを感じていただけるようにしています」

プレミアムブラケティングには、振り幅をユーザーがカスタマイズできるマニュアルモードも用意されている

―― でも、9枚の中からどの画を選ぶかというのは、実はとても難しいですよね。撮影した場所の天気や空気感や、撮り手の感情や好みなど、判断基準が山ほどありますし。

松永氏「そうなんです。そこで好画質の考え方が生きてきます。プレミアムブラケティングはオートとマニュアルが選択できますが、例えばオートの『ホワイトバランス×明るさ』を選んだ場合、光源や光量によって振り幅を自動的に変えてくれるんですよ。検出された光源によって振り幅が変化しますし、検出された光量によっても明るさの振り幅が変わります」

―― おぉ、それは頭がいいッ!(大興奮)

松永氏「撮影時の天気や室内、屋外といった条件を正確に検出することで、『気持ちの良い1枚』に出会える可能性を、ぐっと高くできると思うんです。

9枚の中に、自分が望んでいた画にドンピシャの1枚があった、EX-10が自分の気持ちを分かってくれた、という気持ち良さ。プレミアムブラケティングの中に、そんな気持ち良さを感じていただければ、画質の開発に携わる者としてそれに優る幸せはないですね」

本編とは直接関係ないが、EX-10には専用ケースがオプションで用意されている。こちらはクラシカルな印象で、EX-10に装着した状態でも、充電コネクタ(microUSB)などを使えるようになっている