より「日本らしさ」を演出する表現とは
――先日の「iStockalypse」内の講義では、「日本らしいコンテンツ」の条件として、「アーバン」と「トラディショナル」という相反するふたつを挙げていましたが、どちらが重要なのでしょうか?
ずばり「両方」です。業種によって、都会的でクールな製品を販売しているところもあれば、伝統的な製品を販売しているところもありますので、そういう意味で「アーバン」と「トラディショナル」は両方とも必要だと思います。私が住んでいるイギリスにおいても同様で、伝統的なイメージが要求される場合もありますし、一方ロンドン東部ではクールなものが求められています。
――「日本らしさ」を演出するために、フォトグラファーが工夫すべき点は?
明快な日本らしさを出すには「人」と「場所」をとらえることです。その中の要素として「電気のソケット」、「タクシー」、「食品」、「日本の人々が美しく見えるもの」、「自然」があり、その要素を美しく魅せるために照明やアングルなどを工夫するといいのではないでしょうか。
――今、日本のフォトグラファーに対して「こういった写真が絶対的に足りていない」「早急にこんなイメージが必要だ」というものはありますか?
大企業ビジネス・中小企業・小売業・起業直後(スタートアップ)などあらゆるジャンルのビジネス、あるいはナイトライフ、友人たちがお互いにハグしているような写真、健康的なライフスタイルを営んでいらっしゃるシニアなどですね。バーやレストラン、ショッピングエリアなどに関しても、東京以外のローカルな場所(の写真)が求められています。
――先日の「iStockalypse」で「日本人モデルの写真が少ない」とおっしゃっていましたが、実際に「日本人」をキーワードとした検索は多いのでしょうか? 日本以外からの需要の傾向は?
「日本人」というキーワードがよく使われるのは日本国内です。世界的にはあまり使われず、「アジア」というキーワードが使われます。日本のコンテンツはよく売れますが、それは「人」ではなく、あくまでも「人との繋がり」といった普遍的なものです。
東京の商用広告はロンドンよりもビジュアルが豊富!?
――今回、日本を訪れ、広告などのストックフォトの利用実態をご覧になって、どのような印象をお持ちになりましたか?
私たちが欲しくても入手できないようなイメージがたくさんあり、街中で素敵な広告を見つけては、自分のiPhoneで写真に収めました。私は日本語がわからないので広告のビジュアル部分しか見ていませんが、私が住んでいるロンドンと比べてより多くのビジュアルが使われているように思いましたし、とてもエキサイティングで興味深いものばかりでした。秋葉原周辺に宿泊したので、看板やポスター、イラストなどを撮影しましたが、中でもこの携帯電話の広告(SoftBankの堺雅人が登場するポスター)が気に入りました。
私が求めるのは「刺激になるもの」、「見たことのないもの」、携帯業界であれば「どうやって電話を販売しているのか」「どのように展開しているのか」というのは特に気になります。なぜなら、携帯業界のというのはお客様が多い分野のひとつで、そういった意味で参考になります。
――最後に、ストックフォトであまり写真が売れていないフォトグラファーに対して、何かアドバイスを頂けますか?
セミナーでは「こんな写真が売れている」、「こんなテーマが好まれる」、「こんな風に見える写真が人気だ」といったアドバイスをしていますが、それはあくまでもフォトグラファーの皆さんにアイデアを理解していただきたいからです。最終的には、フォトグラファー自身が「その写真がどんなインスピレーションを与えてくれるのか」ということを納得し見つけていくしかないでしょう。例えば、広告やWebなどで使われている風景があるとするなら、なぜその写真がそこで使われているのかということを自身で理解し、自分だったらそれをどう使うかということを考えるといいでしょう。
日本のフォトグラファーに残された"成功の手がかり"
今回のインタビューでレベッカ スィフト氏が語った「日本のコンテンツは世界中でよく売れる」という言葉は、日本のフォトグラファーにとっては朗報だ。しかしながら、日本のコンテンツはまだ絶対数が不足しているという。この事実は、これからストックフォトに参入してみたい、あるいはストックフォトでいまだ結果が出ていないという日本のフォトグラファーにとって、成功への手がかりになるのではないだろうか? せっかく日本に住んでいるのだから「日本らしい」写真を撮って世界で勝負してみてはいかがだろうか。