実際、iBeaconはどのように使われるのだろうか? 発表当初は資料も少ないため不明な部分が大きかったが、これに関してApple自らが回答を用意したようだ。同社は12月6日(現地時間)、全米254のApple StoreにおいてiBeaconを使った製品ガイドサービスを開始した。App Storeで提供されているApple Storeアプリと組み合わせることで、店舗に入ったタイミングで商品やイベント情報、ストアピックアップを選択した場合にはその旨のメッセージが画面に出現する。通常の位置情報サービスでもストアの位置情報は取得できるが、iBeaconではおそらく店側からビーコンを介して端末に情報をプッシュ配信する仕組みを利用しており、iBeacon技術の応用例を自ら示したものというわけだ。Apple Storeアプリは商品のバーコードを読んでチェックアウト(会計)できる仕組みがあるため、この場合は実際に「NFCによるタッチ」や「クレジットカードの提示」は買い物には必要ない。不完全ではあるものの、Touch IDの指紋認証センサーや4桁の数字のPINコード入力を組み合わせれば、少なくとも本人確認も行えている。
同様な仕組みを実装しているのが「PayPal Beacon」だ。2014年開始のこのサービスは、BLE対応デバイスを持ったユーザーが店舗に近付くと、店舗情報やお勧め情報などが送信されるようになり、さらにユーザーがデバイス上で専用アプリを起動しておくことで、財布から現金やクレジットカードを出したり、あるいはデバイスを店頭の決済ターミナルにかざすことなく商品購入の支払いが可能になるというものだ。BLEで顧客を店舗へと誘導し、実際の支払いはインターネット通信を使ってクラウド上で処理される形となる。iBeaconと同様に、ポイントは「専用アプリを介して決済を行っている」ことと、「クレジットカード等の決済情報はクラウド上に保存されている」ことの2点だ。iBeaconとは異なり、PayPal Beaconは店舗側を対象としたサービスであり、USBスティック状の小型デバイスを用いることで一連の仕組みを実装している。iBeacon対応デバイスにPayPal Beacon用アプリを導入した状態で対応店舗に行くと、このサービスが利用できるようになると考えられる。
同種のサービスはPayPalのほか、Estimoteという新興企業が「Estimote Beacon」という名称での製品展開を行っている。また、iOSデバイスをPOSデバイスに変える「Square Register」で一世を風靡したSquareもまた、同種のBeacon型サービスを計画していると説明しており、さまざまな企業がBLE技術をマーケティングとモバイルペイメントに応用したサービスの展開を進めているといえるだろう。また米メジャーリーグ(MLB)もBLEのBeaconを使った各種サービスを計画しているという話もあり、今後数年で一気にメジャーな存在となりそうだ。
(記事提供:AndroWire編集部)