次いで、日本マイクロソフトの北川美由紀氏は、マイクロソフトが提案するエルゴノミクスソリューションと題する講演を行った。「電車のつり革、今と昔では形状が異なることにお気づきでしたか?」と切り出し、来場者にとって身近なエルゴノミクスの例を紹介。
そして、人の手・指・手首の可動域に最適化したキーボードのフラッグシップモデルとして、マイクロソフトの「Sculpt Ergonomics Desktop」を取り上げた。人間が手を机の上に置いたとき、自然にハの字になるように、キーボードも一直線ではなくハの字形状になっている。さらに、フラットなキーボードではなく、中央部分が盛り上がったドーム状のカーブを描き、非常に先進的でエルゴノミクスに則したデザインなのが特徴だ。
奇抜に見えるSculpt Ergonomics Desktopデザインだが、人間工学を考えて細部まで作り込まれている |
長年エルゴノミクスに力を注いできたという、マイクロソフトの自信作であるキーボードがこちら |
また、マイクロソフトが独自に調査した「Healthy Computing」というインフォグラフィックをもとに、長時間のPC操作を行う92%の人々が、PCの使用に伴う疲労を感じているというデータを示す。にもかかわらず、エルゴノミクス製品は利用していない人が多いという調査結果を公開した。
辛さを感じながらも現状を打破できないという、オフィスワーカーには悲しい現状が見せつけられた…。
ここで、マイクロソフトのWindowsタブレット、Surfaceを取り出す北川氏。ハーマンミラーのフローモニターアームにラップトップマウント、エンベロップデスクにSculpt Ergonomics Desktopという、エルゴノミクスな組み合わせを例に挙げた。身体的負担を軽減したデスクワークに加え、外出時などの機動性も併せ持て、ハイパフォーマーに最適なソリューションのひとつになるのではと締めくくった。
最後に登壇した早稲田大学理工学研究所の三家礼子氏からは、エルゴノミックな環境が本当に疲労の軽減に寄与しているのか、科学的側面から行った、実験結果が報告された。被験者がもっとも心地よいであろう作業環境から、もっとも劣悪なのではというものまで、全部で4つのコンディションを用意し、筋電(筋肉がこわばっているかどうか)を測定。
数値的にもエルゴノミックな環境は有用と示されたが、何より目を見張ったのが、被験者の各コンディション環境下における姿勢の違いだ。エルゴノミックなコンディションではストレスが少ない姿勢なのに対して(先の講演でハーマンミラージャパンの福田氏が述べたように)、もっとも厳しいコンディションでは窮屈な猫背でいかにも首や腰にストレスが掛かっているように見受けられた。
また、「わずか10分間の作業でもエルゴノミックな環境は疲労軽減の効果を実感できた」、「特に椅子による疲労度合いの違いは顕著」などと、多くの被験者が訴えたというアンケート結果も印象的だった。
この実験には15名の被験者が協力。使用キーボードの項目を見ると、ノートPCのパーセンテージが高い |
環境設定は4種類で調査された。「Condition1」がエルゴノミックを取り入れたもので、「Condition4」に向かうにつれ、人体には厳しい環境になっている |
Sculpt Ergonomics Desktopに関する調査結果。特殊な形状なのでボタン(キー)配置では低評価だが、疲れにくさなどでは高いパフォーマンスを示している |
もっともコンディションの良い左側と、もっとも悪い右側。その姿勢の差に驚きを隠せない |
その後、先の登壇者3名と、アカデミーヒルズ六本木ライブラリーでアドバイザーを務める小林麻美氏をモデレータに、パネルディスカッションが行われた。エルゴノミクスを取り入れるなど仕事環境の整備という面で、日本はまだまだ欧米と比較して後れを取っている現状や、今後HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が身近になったら、ひょっとしたら椅子は必要なくなるかも、といった話題で盛り上がりを見せた。
また、12月20日より、「ハーマンミラー×マイクロソフト ハイパフォーマーのためのエルゴノミックソリューションキャンペーン」が実施される。これは、ハーマンミラーの「プレミアムエルゴノミックセット」(フローモニターアーム、ラップトップマウント、エンベロップデスク)購入者に先着50セットでマイクロソフトの「Sculpt Ergonomics Desktop」を、「コンフォートセット」(フローモニターアーム、ラップトップマウント)購入者に先着300セットで同じくマイクロソフトの「Sculpt Comfort Desktop」をプレゼントするというもの。