「PC接続が有線しかないのは光学ドライブだけ」
無線BDドライブ「BDR-WFS05J」と、ワイヤレスドック「APS-WF01J」の概要を紹介したところで、それでは本題に入ろう。「BDR-WFS05J」および「APS-WF01J」開発チームに、まずは製品の開発コンセプトについて聞いたところ、開発に着手した理由は「単純明快」だという。
開発チームの1人、パイオニアのITペリフェラル部 第1営業部 営業1課 主事の星野健一氏は「自社の光学ドライブのラインナップにおいて、上位モデルには付加価値提案を推進しようと考えた」と話す。
「周辺機器周りを見渡すと、PCに接続できる経路が有線しかないのは光学ドライブだけという現状があった。これならワイヤレス化によりユーザビリティ向上を狙えるはず、と考えた」(星野氏)。
ワイヤレス化を付加価値として捉えたことは、光学BDドライブにおいて新機軸といえるだろう。
パイオニア インダストリアル・ソリューションズ部 ITペリフェラル部 第1営業部 営業1課 主事 星野健一氏 |
パイオニアデジタルデザイン アンド マニュファクチュアリング 技術統括部 第4技術部 主事 中川秀紀氏 |
特徴の1つであるBlu-rayの再生については、「ワイヤレスドックをアクセスポイントモードとしたとき、ベストのIEEE802.11n 2×2(MIMO)接続であれば、自社調べで70Mbps程度の実効速度が出る。この速度であればBDでも滑らかに再生できると考えた」(パイオニアデジタルデザイン アンド マニュファクチュアリング〔以下、PDDM〕技術統括部 第4技術部 主事の中川秀紀氏)という。
BDの再生は、パイオニア製BDドライブとの組み合わせでしか実現できない。その理由は「有線接続に比べてワイヤレス通信は遅延が発生しやすく、転送レートも限られているため、光学ドライブに高速アクセスできるようチューンナップした『高速ドライバ』をWindows向けに用意した。この高速ドライバが自社の製品専用のため」(PDDM 技術統括部 第6技術部 2グループ リーダーの石原完治氏)とのことだ。
ちなみに、高速ドライバはMac向けには提供されない。「Windows環境ではBlu-rayの再生が正式にサポートされている。一方、Macは、Blu-rayに正式対応していないので不要と判断した」(中川氏)という。
なお、「BDR-WFS05J」も「APS-WF01J」も、本体とルータ経由で接続できる「ステーションモード」を搭載する。光学ドライブを使うなら、このモードはCD/DVD再生向け。このモードでの11n 2×2(MIMO)接続は実効速度が35Mbpsとなるため、BD再生は難しくなる。
今後はモバイル向けアプリも登場?
今後の計画だが、スピーカーやヘッドホン、オーディオシステムなど、"音"に強い自社のソースを活かしたいという。
「高速転送を活かして非圧縮の信号を飛ばすことができるので、「音」でなにかできないかを考えている」(PDDM 事業戦略統括部 事業戦略室 事業戦略グループ 副参事 下田吉隆氏)とのことで、オーディオ方面での応用を目指すそうだ。
また、iOSアプリの開発にも"こっそり"着手していたとのことで、近い将来iOSデバイスから、ワイヤレスドック経由で光ディスク内の動画や音楽を再生する、といったことも可能になるのかもしれない。
「Android版も一所懸命に取り組んでいる」(石原氏)とのことで、スマートフォン/タブレット方面での活用をぜひ期待したい。