その後、参加者たちは3つのグループに分かれ、スタジオや屋外でモデルを囲んでの撮影の研修が行われた。会場は東京都・千代田区の「アーツ千代田3331」(モデル:男女カップル)、室内スタジオ(モデル:老夫婦と孫)、上野公園(モデル:ファミリー)と撮影シーンもバラエティーに富んでいる。ここからは、参加者の生の声をお届けしたい。

プロとアマの交流による"発見"

アーツ千代田3331では、男女のカップルを被写体にした撮影が行われた。写真の専門学校に通う佐藤さんは、この日のためにわざわざ北海道から(!)上京してきたそう。「本当に来てよかった。プロの方が写真を撮っているところを間近で見てみたかったので、スキルを盗むつもりできました」そう笑いながら語る佐藤さんだが、ファインダーをのぞく視線は真剣そのもの。「やはりプロの方は頭の中に瞬時に浮かぶイメージがちがうんですね。みなさんの話を聞き、撮影を共にしてみて、自分の写真に対する考え方がいかに小さかったか実感しました。これからもがんばります」と語った後、30歳までには独立したい、ときっぱり宣言していたのが印象的だった。

ファインダーをのぞく視線は皆真剣そのもの

佐藤さんの作品

一方、プロのカメラマンである小林さんは、「こういう機会もそうないな、と思い大阪から参加しました。アマチュアの方たちがバーンと近距離で(モデルを)撮っているのを見て驚きましたね。プロはどうしても「こういうときは距離をとって背景をぼかすのが当然」とか考え方がもう凝り固まってるところがあるので、「ああ、こういう撮り方も確かにあるな」など、さまざまな角度からの気付きがあって刺激になりました」と話してくれた。

小林さんにプロとアマの違いは?と尋ねると「おこがましいですけど、最終的な用途を考えているかどうか、でしょうか。あとは先方に求められているものを撮れるか、とか。そこに文字が載ったり、ポスターになったりして、写真だけで完成じゃないことも多いので、撮ったその先を考えることが大切です」とおっしゃっていたのだが、実際撮影の様子を拝見していて、高圧的でないのにしっかりとした仕切りやモデルへの対応は「プロってこういうことなんだ」と感じられた。そして、そんな小林さんの姿を見ている佐藤さんの目がキラキラと輝いていた。

撮影する人によってこんなに場所もアングルも違う

小林さんの作品

人物撮影はアマチュアにとって貴重で刺激的な体験

上野公園の不忍池では、夫婦とその息子という3人のモデルを立てたロケを行った。この会場で撮影をしたフリーカメラマンの森本さんは、普段は物撮影からアシスタントまで行っているそうだ。「以前勤めていた会社では、家族連れを複数組呼んで撮影会をしていましたが、やはりそうすると"ウケる"画がとれますね。ただ、個人でそういう場は作るのは難しく、今回のイベントはいい機会だと思いました。自分で手配しなくてもモデルリリースがついてくるのはいいですね(笑)」と、イベントのメリットについてコメント。また、「周りの参加者の方とお話していると、アマチュアで人物撮影はあまり手がけないという人も多いので、そういった意味でもモデルさんを立てた撮影会を行うのはよいと思いました」と話してくれた。

フリーカメラマンの森本さん

不忍池での撮影風景

アマチュアカメラマンの平川さんは、「普段は散歩がてらカメラを持って撮影していて、撮影会は初めての経験でした。撮影スタイルや機材への考え方もそれぞれだし、モデルさんへ伝える要求は喜怒哀楽が細かく、自分の撮影時間ではプロの方から撮影方向と光の加減などを教えていただいて、大変参考になりました」と、初体験の興奮を語ってくれた。「趣味と商業の違いを考えながら楽しむ事が大切なのかな、と感じたましたし、"やめない、くさらない、あきらめない"がまさにストックフォトのみならず、本当に必要な事なのではないでしょうか」とも語っていた。

平川さんの作品

鈴木さんの作品

また、おなじく不忍池で撮影した鈴木さんも、本業はWeb制作のアマチュアカメラマン。モデルと晴天を生かしたストーリー仕立ての撮影を実施し、手応えを感じていたようで、「これからも「使っていただける写真」を目指してがんばっていきたい思います」と今後に向けての抱負を語ってくれた。

室内撮影は逆光の中、いかにキレイに撮れるかがコツだという

子供のモデルにいかにいい表情をしてもらうかもカギ

筆者自身、デザイナーとして仕事をしているなかで「多分ないとは思うけど、こんな写真がほしい!」という機会がたびたびある。そこで、「iStock」で検索することになるのだが、頭の中をのぞかれたかのようにイメージ通りの写真がさくっとでてくると本当に関心するものだ。また、ざっくりと頭に思い浮かぶキーワードを入力して表示される写真から新たにビジュアルのヒントをもらうことも1度や2度では足りないほどある。

写真に興味のある方、自分の写真を世界に羽ばたかせてみたい方はぜひ、ストックフォトの世界に挑戦してみてはいかがだろうか。なお、この日撮影した写真のなかで優れているものはそのまま「iStock」の商品としてストックされるそうだ。この写真たちがあなたの検索に引っかかる日が、いつかくるかもしれない。

くすきはいね
コトバ&グラフィックデザイナー。 広告デザインやロゴ、カフェのプロデュースなど、多方面にわたる「デザイン」を手掛ける