人物だけではない、許可が必要な被写体
撮影にあたって許諾が必要なのは、人物だけとは限らない。建物やアート作品、ペットなどの写真をストックフォトとして使う場合は、プロパティリリースが必要なことがある。 まずは建築物に関して、とあるホテルや高級住宅の写真を見せた。知っている人が見れば「あのホテルだ」、「あの人の家だ」と特定できる場合、オーナーに許可を得るのがベターだとした。また、とある家族の背景に家が写っている場合、その家のオーナーに許可を得るに越したことはないが、あくまでもグレーゾーンだとしながらも「プロパティリリースがなくても、おそらく問題にはならないだろう」と述べた。
次に、ホテルの敷地内で撮られた写真では、オーナーが見ればひと目でわかる場所であるため、プロパティーリリースが必要という。世界各地のランドマークについては、個々の建物のみを撮った場合と、街の景観の一部として撮られた場合とでは異なるという。どちらもエディトリアル用途(説明を目的として使用される画像)ならおそらく問題ないが、クリエイティブ(広告・宣伝などで使用される画像)としてアップロードできるのは街の景観の一部として撮影した物のみだという。
このほか、博物館、競技場、美術館、軍隊、警察などでの撮影はほとんど許可が必要だし、空港の検査場や入国審査などは「撮影禁止」であることが多いと述べた。特例として、エッフェル塔の夜景はコピーライト(著作権)で保護されているため、エディトリアル用途でしか使えないことも紹介された。
モデルリリースやプロパティリリースを取得するには?
では、被写体に対する許可は、どのようなフォーマットで取得すればいいのだろうか?iStockでは、モデルリリースおよびプロパティリリースの専用フォーム(日本語を含む13言語バージョン)をWebサイト上にてPDF形式で配布しているので、それを用いて申請を行う。
また、iOSやAndroid用のアプリには、各デバイスを使ってモデルリリースを取得できるものもいくつか存在する。iStockでは「Easy Release」や「Top Model Release」など、5種類のアプリを使って取得したデジタルモデルリリースも認めており、モラン氏は、より簡単に使える「Easy Release」を推奨している。常に持ち歩いているスマートフォンを使って面倒なモデルリリースやプロパティリリースをその場ですぐに取得できる手軽さは、ロケ撮影の心強い味方となるだろう。
写真に入り込んだロゴはレタッチが必要?
iStockでは、製品と対象物の写真についての受付可否について、ここで紹介した以上に複雑な規約がある。詳しく知りたい場合は、iStockサイト内の「ストックフォトトレーニングマニュアル」ページを参照のこと |
続いて、コピーライトや商標、知的財産の話へ移行した。iStockでは現在、写真に含まれるすべてのロゴはレタッチなどで消さなくてはならないという。ただし、この制限は半年以内に緩和されるとのことだ。ちなみに、ゲッティ イメージズでは現在、風景などに写り込んだロゴに関しては一部許容している。
ロゴだけに限らず、例えば「玩具」の場合、エルモやバズライト、バービー、ルービックキューブなどの登録商標となっているものはiStockでは受け付けられず、砂遊びセットやテディベア、フットボールなど一般的な玩具については受け付けるという。また、急速に普及している「電子デバイス」を小道具として使う場合、例えばiPhoneを操作中の写真について、iStockで販売している物ではレタッチでホームボタンを取り除くことで、一般的なデバイスのように仕立てていると紹介した。
このほか、PCのキー(Windowsのロゴ)やジーンズのボタン、ステッチ、シャツのロゴ、カバンの柄、スニーカーのラインなども、必要に応じてレタッチして消すことを推奨した。このほか、著作権で保護されているデザイナー家具や本、楽譜の写真を受け付けないこと、通貨の撮影が偽造防止の概念で規約が厳しいこと、さらには自動車では製造年度や車種の特定などで厳しい規約があることなどが事細かに紹介され、セミナーが終了した。このセミナーでは、ストックフォトで写真を売るためには、今後ストックフォトで活動するために絶対に必要となる法律的な知識を、わかりやすく知ることができた。