FeliCaであればFeliCa NetworksがTSMの役割を果たし、Type A/Bであればそれぞれのアプリ/サービスに応じた事業者がTSMとなってセキュアアプリの担保を行う。このTSMにも2種類の系統があり、より携帯キャリアに近い立場で直接ユーザー端末のSEの操作を行うMNO-TSM (Mobile Network Operator - TSM)と、個々のサービス事業者がアプリやデータ配信を行っているSP-TSM (Service Provider - TSM)という形で存在している。MNO-TSMは「アグリゲータ(Aggregator)」という性質を持っており、事業者によっては1つのMNO-TSMに対して複数のSP-TSMがぶら下がる形でサービスを提供しているケースがある。この場合、ユーザー端末とMNO-TSMの間は公衆回線を通るため高いセキュリティが必要になるが、MNO-TSMとSP-TSMの間は専用回線となるため、ユーザー端末に直接OTAするよりも安全性が高いというメリットがある。
DNPが提供する「Smart Bureau (スマートビューロ)」というサービスは、ここでいうTSMにあたる。DNPはスマートビュー口をASP(Application Service Provider)形式で提供しており、中小事業者がDNPのサービスを間借りする形でSP-TSMを利用できる。FeliCaを除けば、このような形で包括的にウォレットやTSMを提供できるのは、日本ではDNPと凸版印刷の事実上2社だけといわれている。
iOSも含めたモバイルウォレット・ソリューション
CartesのDNPブースでは、同社にモバイルウォレットをライセンスしているC-SAMもデモストレーションを行っており、その最新成果の1つとして「Salon de Wallet (サロン・ド・ウォレット)」を紹介していた。フランス市場向けのサービスのようだが、ハイパーソフトが提供している美容市場向けPOSシステムと連動した会員証をベースに、メンバー向けに用意されるモバイルウォレットとなっており、ポイントやEコマース、お勧め情報が付加価値サービスとして提供される仕組みになっているという。どちらかといえばマーケティング重視のサービスのように思える。
現在C-SAMが開発を進めている「Salon de Wallet (サロン・ド・ウォレット)」というモバイルウォレットのアプリ。クレジットカード情報を保存してタッチによる美容サロン店舗での決済が可能なほか、ポイントカードの保存、DMなどの関連情報を集積できる |
そしてSalon de Walletで特徴的なのはiOSプラットフォームもサポートしている点だ。従来のモバイルウォレットはNFCとセキュアエレメントの存在を前提に構築されているため、どうしてもAndroidやBlackBerryといった同機能をサポートしたプラットフォームに依存する傾向があった。