よく売れている写真はどれ?
スウィフト氏は、彼女からの情報発信を一時中断し、数枚ずつの写真をスライドで表示して「どの写真が一番よく売れているか?」と受講者に質問するクイズを始めた。題材は、シロクマやペンギン、ライオン、象といった動物や、女性、男性などさまざまで、いずれの問題も単に正解を示すだけでなく「どうしてこれが売れているのか?」、「なぜ人気があるのか?」という解説を交えながら紹介した。なかには「すべてよく売れている」という意地悪な問題で会場に笑いがこぼれるなど、会場は大いに盛り上がった。
次に、日本でのトップセラーについての話となった。まずは、どこの国でもよく売れている「家族」をテーマにした写真の人気傾向として、子どもが屋外で遊んでいる写真(=「健康」というイメージ)を挙げた。被写体としての家族構成について、最近は子どもが1人の場合や、シングルマザーあるいはシングルファーザーの写真にも需要があるため、「両親+2人の子ども」という一般的な家族構成にこだわる必要はないという。そのほか、祖父母+両親+1人または2人の子どもという三世代構成の家族写真は継続して人気が高いようだ。
また、日本でよく売れているのがビビッドで明るい色使いの写真とのことだ。こうした写真は、ほかの国での人気はそれほどでもないという。続いて木々や植物、空といった自然の写真には、「持続可能な成長」、「環境への優しさ」、「人間と自然との共生」などのコンセプトで活用しやすく、世界各国でも人気が高いようだ。また、「温泉」や「富士山」「東京の景観」「高層ビル」などはさまざまなジャンルの業界から、「サーバー室」「オフィス」などもテクノロジー業界などからよく売れているという。このほか、ビジネスやスマートフォン、女性、ショッピング、ビル、ネオン、家具、日本の美などさまざまなテーマの写真について、解説を交えながらスライドで次々に紹介した。特に日本の美に関しては、世界各国にも受け入れられやすいものだと述べた。また、ガラスを多用したビルの写真は今トレンドとなっている「透明性」を表し、オープンでクリアなイメージを醸し出すものだと説明した。
日本だからこそ撮影できる「今、求められている写真」とは?
最後に、現在多くのカスタマーから求められていながらも、まだ提供できていない、あるいは不足している写真として、真っ先に「日本人の父親と子ども」を挙げた。これは父親が子どもと一緒に遊んだり、食べたり、掃除したり、あるいは初めて生まれた赤ちゃんを育てているところや、家族の日常などをとらえたものだ。
また、ティーンエージャーもしくは20代前半の子どもが親と一緒にいる写真、親子で食事を作っているシーン、親子で自然を楽しんでいるシーン、都会の中で何かをしている写真、クリスマスプレゼントを交換しているシーンの写真も足りていないという。あるいは、年配者が運動などを楽しんでいるシーン、祖父母が孫と時間を過ごしているシーン、病気のシニアを家の寝室でケアしているシーンなど、単なるポートレートではなく「実際に何かをしているシーンの写真」などにも需要が高まっていると述べた。このほか、伝統工芸やさまざまな生活スタイル、働いているシーンなどについて、日本人のモデルを使った写真が少ないことを訴えた。
最後に、今後ニーズの高い写真などの情報を得るための手段として、iStockのFacebookページやTwitterアカウント、iStockの「Creative Resource」ページ(英語)、そしてビジュアルトレンドの情報オンラインマガジン「Curve」を紹介し、セミナーは終了した。
このセミナーでは、実際にストックフォトで売れている数多くの写真を目にしながら、いま求められている写真の傾向を楽しみながら知ることができるという、これからフォトストックで写真を販売していこうという受講者にとっては、とても興味深い内容だったに違いない。