ストックフォトの販売で得られる利益は?

自分が撮った写真をストックフォトとして売る場合、最も気になるのが「実際にどれくらいの利益を出せるか?」ということだろう。ここでクック氏の話は、ロイヤリティに関する内容に及んだ。

同氏によれば「日々のすべての時間を写真撮影につぎ込めるプロならば、毎月数千ドルの収益を上げられるかもしれません。一方、空いた時間に撮影する程度であれば、"趣味レベル"の利益となるでしょう。要するに、何を撮り、どれくらいの枚数をアップロードするかによって、収益は変わってきます」と語った。そう言及した上で、「良い写真を撮ればそれなりに良い利益を期待できるでしょう」と、受講していたフォトグラファーたちを鼓舞するような発言も飛び出した。ちなみに、専属コントリビューターに支払われるロイヤリティは、最大45%、非専属のコントリビューターは15%~20%となっている。

「良いストックフォト」の条件と「人気のカテゴリ」

では、同氏が口にした、ストックフォトにおける「良い写真」とはいったいどのようなものを指すのだろうか? クック氏は「良い写真」の条件として、「アイデアや感情、メッセージ性がうまく表現されていること」、「明快なコンセプトがあり、見た瞬間に理解できること」、「ノイズがないことや広告コピーやロゴの考慮した余白があること」といった3点を挙げた。

また、特に需要の高いカテゴリとして、「ビジネス」、「ライフスタイル」、「スポーツ」、「自然&野生動物」、「コンセプト&アイデア」、「旅行&カルチャー」の6つのカテゴリを列挙。続いて、カテゴリごとに参考となるいくつかの写真をスライドで映し出しながらの解説に入った。

まず「ビジネス」カテゴリで求められるビジュアルの例として、スーツを着用した写真やカジュアルな服装の小売業者、暗いイメージ、ユーモアのあるもの、コンセプトの強いもの、ムードのあるものなど多岐にわたっているとし、同カテゴリの特徴として「白い背景」を挙げた。背景を白一色にすることで「真の人間」を強調できるという。

人と自然が溶け込み、自然、健康、アウトドアといった明快なメッセージが伝わってくるこの写真は、これまでに2万2000回ダウンロードされたという。広告コピーやテキストのスペースも確保されている

次に「ライフスタイル」カテゴリの人気ビジュアルについて、友達や家族とのリラックスタイムや日々の家事、ショッピング、ディナーといった日常生活における楽しげな写真、冒険的な写真、健康的な老人の写真などを紹介。このカテゴリではビジネスとは反対に「白い背景ではない、ロケーションでの写真」が受け入れられやすいという。続いて、「スポーツ」や「自然&野生動物」、「コンセプト&アイデア」「旅行&カルチャー」の各カテゴリについても作品の例を挙げながら紹介した。いずれもコンセプトが明確であるものが求められやすいとして、「この写真は何が言いたいのか? どんなスローガンか? 購入者は何に使うのか? ということを意識しながら撮影することが重要」だと述べた。

撮影時に"押さえるべきポイント"を公開

セッションも終盤となり、同氏はストックフォトを撮るときの"押さえるべきポイント"として、「新しさが表現されている写真」、「自然でリアリティのある写真」、「地域性が強調されている写真」、「リーガル(法律)的に問題のない写真」、「プロダクション価値の高い写真」といった5点を挙げた。

そして、こういった写真を撮るためには「準備と計画」が大切だと強調。三脚やフィルター、レンズ、バッテリー、小道具、照明、モデルなどをしっかりと準備するのはもちろん、リーガルに関してもクリアした上で撮影することを提案した。加えて、雑誌やWebサイト、「500px」や「Flickr」、「Pinterest」といった写真共有サービスなどで「良い写真」を見て研究するように促した。さらに、場合によってはレタッチ作業や写真のセレクト作業などを委託し、生産性を高める必要もあるだろうと述べた。

最後に、写真をiStockへのアップロードする際のタイトルやキーワードの入力方法の説明や、応募した写真が審査に通るための基準なども解説。iStockには140人のインスペクターがおり、アップロードされた写真について、審査のほかフィードバックも行われるということだ。

今回このイベントに参加したすべての人は、ポートフォリオ審査をクリアした高レベルの写真家ばかり。しかし、その大半がストックフォトの未経験者ということだ。彼らにとってこのセミナーは、「ストックフォトとは何なのか」、「どういった写真が好まれ、どのような制限があるのか」など、なかなか説明されることのない基礎を一から理解するまたとない機会となったことだろう。