ニコンの「ニッコールレンズキャンペーン」をご存じだろうか。ニッコールレンズの発売80周年と累計生産本数8,000万本達成を記念してのキャンペーンで、対象期間中にニッコールレンズを購入、応募した人の中から計330名を著名写真家と行く「プレミアム撮影体験ツアー」に招待するというもの。
このツアーには、家族ペア対象の「親子で雄姿を記録に残す 小湊鉄道 貸切&撮影の旅」や、女性限定の「ABCクッキングスタジオタイアップ 作る・撮る・食べるXmas Cooking撮影会」、そして「ヘリコプターでの夜間飛行 大都会を撮るナイトスカイクルージング」といった豪華な企画など、ユニークな計28のコースが用意されている。残念ながらキャンペーン応募期間はすでに終了してしまったが、11月9日に実施された「ワンランク上の撮影を楽しむ 羽田空港近郊&海上からの飛行機撮影ツアー」に同行させていただくことができたので、そのレポートをお届けしたい。
プロの写真家からアドバイスをもらえる特別な瞬間を味わってほしい
「プレミアム撮影体験ツアー」について、ニコンイメージングジャパン 宣伝部の河村信太郎氏に話を聞いた。
河村氏は「ただニッコールレンズを買っていただくだけでなく、せっかくご購入いただいたレンズを実際に使って、その性能を存分に味わっていただく機会を設けたいと思っていたのです」とイベントの経緯を説明。「今回の"海上から飛行機を撮影する"といったような、普段はなかなか難しい本格的な撮影について、プロの写真家から直接アドバイスをもらえる。参加者の方々には、そんな特別な瞬間を味わっていただければと思います。この機会に、プロのテクニックをしっかり吸収していただきたいですね」と趣旨を語った。
河村氏によれば「ワンランク上の撮影を楽しむ 羽田空港近郊&海上からの飛行機撮影ツアー」は、全コースの中でも特に競争率が高かったとのこと。当選された方は相当な強運の持ち主だったということだ。
今回のツアーの行程は、まず講師役の写真家による撮影のポイントについてのセミナーが行われ、その後、参加者は撮影スポットへ移動。撮影場所を変えながら一日撮影を満喫して、最後に本日の自信作を持ち寄り、先生に講評をいただくという流れ。ちなみに、今回の参加者は女性2人を含む約20名。年齢層も20代からと幅広く、北海道や新潟、大阪などから参加された熱心な方も。およそ半数の方が、飛行機を撮るのは初めてとのことだった。
この日のツアーデザインとセミナー講師を担当したのは、中野耕志氏。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、雑誌やカレンダー、広告などで幅広く活躍されている写真家だ。出発前のセミナーは約1時間。中野氏の作品を例に、撮影時の設定や工夫、苦労話などのエピソードが語られた。
中野氏の必殺アイテム「スカイレシーバー」。管制情報を傍受して撮影に活用する。気象情報などもリアルタイムでわかるスグレモノだ |
戦闘機や野鳥もまた中野氏の得意とする被写体。「空を飛ぶものが好きなんです」(中野氏) |
飛行機撮影で気を配る事柄のうち、中野氏がもっとも重視するのは事前の情報収集だという。自分の撮影イメージを作品にするためには、いつどこでどの方角にレンズを向ければいいかを熟考するのだ。飛行機は風向きや機種で運用が変化する。青空に映える冠雪の立山連峰を背景に、JALのB777をフレームに収めるために必要な条件を考え、天気図をチェック。もちろん、刻一刻と変化する現場での状況把握も重要だ。スカイレシーバーで管制情報を傍受し、「flightradar24」(航空機レーダーのスマホアプリ)とにらめっこする。
余談だが、スカイレシーバーで管制情報を傍受するのは違法でもなんでもない。実際、国土交通省の公式サイトには「エアバンドを聞いてみよう」というページもある。ただし、傍受した通信の内容を漏らしたり窃用したりすると、電波法違反となるのでご注意を。
また、実際の撮影シーンで活用したい、電柱や看板を隠す小技や飛行機体単体の構図となる形式写真の撮影のコツなど、すぐに役立つノウハウも紹介された。ちなみに、中野氏はニッコールレンズの魅力を次のように語る。
「圧倒的な切れ味と解像力が魅力です。特に私の場合、被写体が戦闘機や旅客機などのハードなもの、そして野鳥など繊細なものです。それゆえ、しっかりとしたシャープな切れ味が求められます。また、飛行機写真は夜景を撮ることが多いんです。高感度撮影も多用する夜景撮影では、レンズ内のフレアやゴーストがどうしても気になります。その点、ニコンのナノクリスタルコートが施されているレンズは逆光耐性が非常に高い。逆光障害が取り除かれたことで、作品作りの自由度が大きく広がった。これは本当に助かっています」
屋形船でいざ東京湾へ!
セミナー終了後は、バスで東京湾へ移動。撮影のために用意された屋形船へと乗り込み、海上の撮影ポイントへと出発。しかし、この日の空模様はあいにく、時折小雨がパラつく鈍曇り。屋形船の船首に波頭が砕けるたび、船体がガツンと揺れる。船酔いの激しい筆者は、あらかじめ酔い止めを飲んでの参加である。
とはいえ、船内は和気あいあい。お互いまったくの初対面だった参加者の方々も、さすがは趣味を同じくする者どうし、あっという間に打ち解け合ってカメラ談義に花を咲かせていた。このようなコミュニケーションの広がりも、時間と被写体を共有する撮影会ならではの魅力だろう。
屋形船へ乗り込む参加者一同。「昼から屋形船に乗るのは、初めてですね(笑)」 |
貸出機材も用意された。望遠レンズを持っていない人も安心! |
船内で中野先生にアドバイスを受ける |
窓の外に滑走路が見えてきた。船が停まるまでガマンできない! |
やがて船は最初の撮影スポット、羽田空港の離陸滑走路沖合に停泊。文字通り離陸をメインに、400mmや500mmといった超望遠レンズを使用すれば遠方の着陸機も狙えるロケーションだ。参加者は二手に分かれ、船外のデッキと船内で時間を交代しながら撮影を楽しんだ。とはいえ、船体は揺れる。
停まっていても船体が左右に大きく揺れるので、筆者自身、デッキの手すりにしがみつきながら「命綱が必要なのでは?」と感じる瞬間すらあったほどだ。だが、それでもみなカメラから顔を離さない。旅客機が離陸して上昇に入るベストな角度を捉えようと夢中になってシャッターを切る!
セミナーでは「露出はマニュアルが基本」と話していた中野氏。いつもはISO100、f8、1/500(シャッター速度)を基本に機体色などを勘案して設定を詰めていくとのことだが、十分な光量が得られない上に足場も不安定なこの状況に「シャッター速度優先モードにして、なるべくシャッター速度を稼ぎましょう。ISOは1600かそれ以上まで上げてもOK」と助言。光量不足で発色が難しいことから、ピクチャーコントロール」をあえて「モノクローム」にしてみるのもアリ、ともアドバイスしていた。こういった、状況に応じた柔軟な思考パターンも、また大いに勉強になるところだ。
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