しかし、この頃からPDP事業の「異変」が表面化してきた。

2008年4月に行われたパイオニアとのPDP事業に関する包括提携会見

2008年4月にはパイオニアとPDP事業に関する包括提携を発表。パイオニアは、パナソニックに技術供与を行う一方で、PDPモジュールの生産を終了。パイオニアの技術者はパナソニックへと移籍し、パイオニアのプラズマテレビ撤退へとつながる。

また、2008年9月には日立製作所とのPDP事業に関する協業拡充を発表。日立プラズマディスプレイで行っていたPDP生産を終了。パネルをパナソニックから調達することを発表した。これも次のステップでは、日立製作所のプラズマテレビからの撤退へとつながることになる。

さらにパナソニックでも動きに変化が出始めてきた。2009年1月には、2009年5月に稼働を予定していたP5の稼働時期を11月に延期すると発表。さらに、2012年までに総額2,800億円を予定していた投資計画も、2,100億円に縮小することを発表した。

P5の稼働延期と投資減額の発表

パナソニックが展開した5つの工場の生産能力の比較

大坪文雄社長(当時)は、「今回の設備投資計画の見直しは、市場の減速に対応したもの。だが、業界以上の成長を遂げることには変わりがない」とコメント。成長が鈍化しはじめたものの、パナソニックの成長は続くとの姿勢を明確にした。

プラズマテレビの年間出荷実績(単位:万台)
2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
36 71 200 350 425
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度
557 682 752 480 192
※上記の出荷数値はパネル外販込みのもの。

P5は、27万7,000m2の延床面積を誇る世界最大のPDP工場と位置づけられ、プラズマパネル生産の最先端設備を導入。2,280×3920mmのパネルサイズにより、42型で16枚、50型で9枚取りが可能で、フル稼働時には42型換算で月産100万枚の生産規模を見込んでいた。

尼崎の最新PDP工場として竣工したP5

2009年12月に行われたP5の竣工式

2010年7月から受注を開始した世界最大となる152型4KフルHD3D対応プラズマディスプレイ「TH-152UX1」も、P5で生産されていた。

だが、P5の設備導入計画は途中で止まり、2011年10月にはP5の稼働を2011年度末までに休止すると発表。また、2010年8月にはP3の第1期設備を、中国・上海工場へと移設すると発表した。だが、これも、P5の稼働休止の発表と同時に、P3の上海工場への移設を中止すると発表した。ここでは2011年度内にP3の稼働も停止すると発表している。

P5の生産施設の様子。152型のプラズマディスプレイを生産できる

P3は一時、太陽光パネルの生産拠点へと転換する計画も打ち出されたが、新規に国内生産体制を確立するメリットが少ないとの理由から、これも見送られることになった。

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