PDP事業の終息と米国および中国のテレビ事業を再編する

もうひとつ、今回のPDP事業の終息に合わせて、米国および中国のテレビ事業にもメスを入れる。

米国、中国のテレビ事業では2013年度見通しで約80億円の赤字を計上する見通しだ。そこで、販売チャネルを絞り込み、特に米国においてはファクトリーダレイクトと呼ぶ、工場直販型のビジネスモデルに大きくシフトする。これによってオペレーションコストを大幅に削減。PDP事業の終息と合わせて、2015年度にはテレビ・パネル事業の赤字解消に目処をつけるという。

プラズマテレビは大画面化が特徴であり、大画面ニーズが大きい米国や中国は、プラズマテレビの主力市場となっていた。そういった意味でも、今回の米国と中国におけるテレビ事業の見直しは、プラズマテレビからの撤退に合わせて、当然のものだといえる。

つまり、テレビにおいて、世界最大市場となる米国および中国におけるテレビ事業を縮小するとともに、将来に向けて、再度構築しなおすという荒療治が必要となるのだ。

「米国、中国はとりわけ価格競争が激しく、大きな赤字を出しており、思い切ったオペレーション改革が必要である。体制のスリム化、効率を徹底する」と津賀社長は語る。

米国、中国のテレビ市場における韓国勢として熾烈な戦いからは、一度手を引くというのがこの施策の意味するところだ。プラズマテレビからの撤退は、テレビ事業の世界戦略そのものを見直すことにもつながる。

では、これからパナソニックのテレビ事業はどうなっていくのだろうか?

津賀社長は、「テレビ事業については、パネルを内製化するという考えはない。したがって、パネルを購入して、どのような価値を提供していくのかということがこれからの課題となる」と前置きし、「いまテレビ事業の方向性のひとつとして、仮説を立てているのが、白物家電のひとつにテレビ事業を位置づけるということ。その具体的な取り組みが、スマートビエラである。スマートビエラは、マイホーム機能が特徴であり、テレビは単にテレビ放送を受けるだけのデバイスではなく、ネットにつながり、クラウドを利用しながら、様々なサービスが提供され、生活の場において、暮らしを助けるデバイスになる。より家と一体感を持ったようなテレビづくりを目指す」とする。

テレビのスマート化によって、白物家電や住宅関連事業を持つパナソニックの強みを生かすことができる領域へと展開し、そこにパナソニックならではの価値を作ることになる。

そして、「パナソニックは、液晶テレビの大型化を進めているほか、有機ELテレビの開発に力を入れている。プラズマテレビから撤退しても、パナソニックのテレビの価値は下がらない」とも語る。

2015年以降の投入が見込まれる有機ELテレビでは、自らはパネルの量産を行わない姿勢だ。

今回のPDP事業の終息によって、パナソニックはテレビ事業戦略を再構築することになる。パナソニックは、2018年の創業100周年に向けて、家電事業に加え、住宅関連事業、車載事業の3本を成長の柱に据える考えだ。そのなかに、テレビ事業をどう組み込むのか。テレビ事業の再定義が必要となる。

パナソニックの強みを生かすことができたプラズマテレビを失ったテレビ事業において、その答えをいち早く導き出すことが、テレビ事業の次の成長戦略を描くことにつながる。