――「すべり芸」というものは、いつ頃から世の中に浸透しはじめたんだと思いますか。
いつぐらいですかね? 古くは村上ショージ師匠とか。祖先ですよ。脈々と受け継がれて、だんだんと浸透していったんじゃないですかね。芸人の数も増えたらいろんなキャラクターもあるし。すべり芸もあればキレ芸もある。結果的に、すべり芸の芸人がだんだんと増えてきたことが現在につながっていると思います。
――岡田さんもその中で「すべり芸」を磨き続けて今にたどりついたんですね。
たどりついたというか、これは常日頃言っていることなんですが、僕は面白いと思って言ってるんです。どうもみなさんと周波数が合わないというか…。そういう部分があるみたいですね。
―― 一般人が真似できない芸当ですね。
そうですね(笑)。一般の方がやると本当にただただ恥ずかしいというか。ただただ軽蔑されるというか。これだけは非常に危険です。
――最近、自分のポジションを危うくするような方はいますか?
まぁ、すべり芸人というのは、いろんなすべり方がありますから。過去にも一緒に集まって番組をやったこともありますが、あの鈴木拓(ドランクドラゴン)という男は(笑)。あんなに思い切って、腕を振ってすべる奴はいませんね。あんな、気持ちいいやついません。
――岡田さんが司会を務めているdビデオ&BeeTVバラエティ番組『すべり場』(毎週木曜更新 全12話)でも、鈴木さんほかたくさんのすべり芸人が出演しています。収録では、すべるどころか笑いも起こっているそうですね。
でも、まぁそれはただ単に「面白い」じゃないんですよね。1個、2個、曲がって曲がってみたいな。そういう裏に入った笑いが多い。でも、お客さんが目の前にいることによって、すべり芸人たちが心の中で、助けあおうみたいなそういうことは感じ取れましたけどね。普段だったら、見放されて一人ポツンとなることもありますが。でも、この番組ではみんながいます。逆に俺なんかは他人がすべっているのが一番好きですからね。楽しくて仕方がない(笑)。
――「すべり笑い」が成立する上で重要なことは何ですか。
すべった時に、いかにお客さんに楽しんでもらえるか。すべって哀れみの目で見られると、こっちとしても非常に辛いんです。すべった時に十人十色のいろんな乗り越え方があると思うんですけど、それによって温かい目にするための「努力」が大事です。その切り替わる瞬間で笑いが起こる。だから、みんな大変なんです。相撲で言ったら、そのまま押し出したり、上手投げで勝ちたいんですけど、ズルズルズルズルと土俵際まで行くことが多いですから(笑)。
――イベントMCの仕事も多いですね。取材している時も、登場の時点で笑ってしまいます。そういう時は「すべり芸」というよりも、盛り上げ役に徹している印象ですが。
そうですね。逆にああいう環境の方が得意になってきています。取材というのは、カメラマンさんやライターさんなどがいて、別に笑いに来ている「お客さん」ではないですから。そういう状況をいかに自分の空気で、笑いに変えるかはある意味でやりがいがあるんです。確かに、芸人にとって辛い状況ですが、荒れた場にはやっぱり芸人は強いと思います。
――あらためて20周年を迎えましたが、現状には満足していますか。また、今後どのように活躍してきたいですか。
我々にとっての雲の上の存在は、やっぱり上島竜兵さん。上島さんの場合は、すべり芸とかそういうものを超越している芸人さんなんですよ。すべってるんじゃないんですよ。うけてるんじゃないんですよ。"上島ってる"というか。あとは"出川ってる"みたいな。そういう域の芸人さんなんですよね。その人そのものがジャンルになっているような。そこまで行けたら芸人として強みになるというか、憧れですよね。
――じゃあ、3年後ですかね?
本格的にすべりだす3年後ですね(笑)。それがどういう方向に行くか。危ない方向に行ったらやばいですね。