1995年の創業以来、静止画・動画・音楽などさまざまなデジタルコンテンツの販売を行う、世界最大級のデジタルメディア・プロバイダー「ゲッティ イメージズ」。2008年より写真共有サイト「Flickr」と提携し、投稿された写真が同社のフォトエディターの目にとまると、撮影者にその写真の販売オファーを行う「フリッカーコレクション」プログラムが用意されるなど、アマチュアフォトグラファーにとってもなじみ深いストックフォトだ。

今回は、ビジュアルトレンドに精通した、ゲッティ イメージズのクリエイティブ・プランニング・マネージャーであるミカエラ・シュヴィング氏に、今求められている写真の傾向などについてお話を伺った。

ミカエラ・シュヴィング氏
ゲッティ イメージズのクリエイティブ・プランニング・マネージャー。ビジュアルを検索する世界中のクリエイティブ担当やマーケティング担当に読まれているビジュアルトレンドレポート「Curve」の編集も担当している

写真の目的が「記録」から「共有」へ

シュヴィング氏は、まず「写真」の歴史から語り始めた。コダック社が1800年代に発表したブローニーカメラによって歴史の幕を開けた写真は、白黒写真から始まり、カラー写真、インスタント写真、デジタル写真、そして機器のモバイル化と進化を続けた。

かつて、個人が撮った写真を他人に見せる手段といえば、アルバムや額縁に入れたものを家族や友人などに見せる程度にとどまっていた。しかし現在では、SNSや写真共有サイトを使い、見知らぬ人とも簡単に共有できる。シュヴィング氏は、「写真は個人の表現方法のひとつとして、友人や家族とのつながりを強める手段、あるいはストーリーテリングの手段として定着した」と言及。さらに「モバイルテクノロジーの普及によって、写真が日々の生活に定着した」と述べた。

続いて同氏は「驚くべき数字」として、写真というものが誕生して現在まで撮られた総数(3.8兆枚)のうち、約10%がここ最近12カ月間に撮られたものであることを紹介した。「スマートフォンなどのモバイル端末に付属するカメラでは、写真を撮る目的が"記録"ではなく"共有"へと変移している」とし、「"ある瞬間を共有するための手段"として写真が用いられている」ことを強調した。世界中で撮られる写真の数が激増すると共に、品質も向上し、アマチュアでも高品質な写真を撮影できる状況が整ったのが現状だ。

より"オーセンティック"な写真が求められる時代

こうして、カメラの性能とアマチュアの技術が向上し、すべてのフォトグラファーがクリエイターやキューレーターとして活躍できる時代となった今、ゲッティ イメージズではどういった写真が求められているのだろうか?

シュヴィング氏は「実際の人々が、実際の場所において、実際の感情を示しているような"オーセンティック"な写真のニーズが高まっている」と述べ、同社がFlickrと提携して実施している「フリッカーコレクション」プログラムを紹介した。

これは、Flickrにアップロードされている写真の中から、めぼしい作品に対してゲッティ イメージズ側から販売のオファーを行うもの。同氏によれば、現在ゲッティ イメージズが販売している写真の80万枚以上が、フリッカーコレクションから集めたものだという。同社が「本物の瞬間」を重視していることの表れだろう。

ゲッティ イメージズの公式Twitterアカウント

また、同氏は、ゲッティ イメージズの公式Twitterアカウント(@GettyImagesWant)では、同社が求めている写真などのリクエストがツイートされるため、フォトグラファーたちが「今、求められている写真」を知る手がかりになるともコメントした。

ソーシャルコンテンツのマーケティング活用例

続いてシュヴィング氏は、ソーシャルコンテンツにおいて写真・広告展開することで、顧客とのコラボレーションを実現している活用例を3つ紹介した。

ひとつめは、愛を感じる瞬間をとらえた写真を投稿するフォトギャラリーを開設したティファニーの取り組み。「同社のオーディエンスに自分たちの実生活の瞬間を提供してもらうことで、エレガントなコンテンツを獲得できるうえに、自分たちもティファニーの一員になる場を提供している」という。ふたつめは、Tumblrを利用したウェブサイトで独創性のあるコンテンツや動画、写真を適合させてブランドイメージの向上に効果をあげたGAPの企画だ。

そして、ユニークな3つめの取り組みは、米国の金融機関である「プルデンシャル」によるキャンペーン「Day One Stories presented」だ。これは、退職初日に撮った写真を集めてドキュメンタリー風の動画に仕立ててWebサイトで公開しているもので、シュヴィング氏は「退職後の不安なシニア層に共有の場を提供した。ソーシャル活用を行う企業は若者を対象にした業種やファッション業界が多いため、シニア層をターゲットとした金融機関が行ったことに注目している」と述べた。

ティファニーの「True Love In Pictures

メディアミックスブログサービス「tumblr」を活用したGAPのWebページ

「プルデンシャル」のシニア向けキャンペーンサイト