内蔵DAC+DSP+デジタルアンプという組み合わせは、どういったサウンドを聴かせてくれるのだろうか。今回は、筆者が日常的に使用しているデスクトップPCに接続して試聴を行ってみた。
最初に出た音で、まず驚かされる。いわゆるPCスピーカーの音ではない。情報量の多い中域に、それに負けないだけの低域が加わっている。定位や解像度も十分に感じられる。小型スピーカーのサウンドというと、無理やり作られた感じがするものがよくあるのだが、PEBBLESの場合、そういった箱庭っぽさは一切感じられない。いたってナチュラルかつパワフルだ。
試聴した曲は80年代のフュージョンや古めのロック系が中心で、2日間ほどPCに繋ぎっぱなしで使っていたのだが、サウンド的には、躍動感と中高域のきらきら感をフルレンジ1発で出す、JBLの小型スピーカーの伝統を受け継いだモデルといった感じだ。
このスピーカーは、驚くことに5,980円前後で販売されている。このクラスで、ここまでのサウンドを聴かせるスピーカーを、筆者はほかに知らない。
ニアフィールドというリスニングスタイル
PEBBLESは、PCに接続してデスクトップで使用するスピーカーだ。音楽配信サービスやCDからのリッピングによって、PCに音楽ライブラリーを構築しているという方は多いだろう。しかし、そういった場合のリスニング環境はどうだろうか。PCオーディオに興味を持ち、それなりに投資しているという少数のユーザー以外は、PCはあくまでもライブラリーの構築用で、メインの再生環境としては考えていない場合が多いようだ。そういったユーザーが、サウンドをグレードアップする手軽な手段として、PEBBLESはなかなか魅力的な製品だといえるだろう。
このところ、スピーカーの至近距離で音楽を聴くスタイルのことを、「ニアフィールド」と表現することが増えている。デスクトップで音楽再生環境を構築した場合、必然的にニアフィールドリスニングというスタイルになる。ニアフィールドリスニングの場合、部屋の環境をそれほどシビアに考える必要はない。また、リスナーの位置が固定されているため、スピーカーの指向性を気にすることなく、一番特性のよいスポットを使うことができる。
PEBBLESは、このニアフィールドリスニングに特化した製品のように筆者には感じられた。PEBBLESのサウンドには、上で書いたように不満な点はない。例えば、もっと上のクラス、1本2~3万円のコンパクトスピーカーでも、ここまでのサウンドを奏でるモデルはそうはないだろう。しかし、PEBBLESでは左右方向に少々指向性を感じる。この指向性は、角度が離れると特定の音域が減衰するという直線的なもののではなく、聴く角度によって音にムラが現れるというちょっと変わったものだ。これは独特な形状のせいなのだろうか。リスニングポイントが固定されたニアフィールドリスニングの場合にはまったく問題はないのだが、部屋全体に音楽を流すような用途にはあまり向いてはいなといえるだろう。
また、試聴に使用したPCはデスクトップタイプで、64bit版のWindows 7環境だ。一方、撮影に使用したPCは、32bit版のWindows Vista環境だ。試しに32bit版のWindows Vista環境でも聴いてみたところ、2つのPCで出てくる音はまったく違っていた。64bit版のWindows 7環境に比べて、32bit版のWindows Vista環境のほうは、かなり薄いサウンドだ。使われているオーディオドライバーはMicrosoft純正。今回は2つの環境しか試していないため結論は出せないのだが、OSによって、ドライバーの性能にそれほどまでの開きがあるのだろうか。