さらなる改良が加わったモダンIME

2つめはモダン環境におけるMicrosoft IME。開発担当者いわく「IME Reimagining(再創造)」と題して、モダンアーキテクチャ上のMicrosoft IMEを再開発したという。Windows 8では、各Windowsストアアプリのインプロセスとして動作していたため、複数のWindowsストアアプリを起動すると、それだけMS-IMEがインプロセスとして起動する仕組みだったが、Windows 8.1ではIME固有のプロセスとして動作するOut-of-procとして動作。そのため、パフォーマンスやメモリー消費量を大きく軽減したという。

さらに堅ろう性を高めることで、Windowsストアアプリが何らかの理由でハングアップしても学習情報や入力履歴といった情報がダメージを受けることはないそうだが、Microsoft IME自体がハングアップした場合はWindowsストアアプリを巻き込む可能性は拭い切れないそうだ。なお、WindowsストアアプリからMicrosoft IMEが保持するデータへのアクセスは従来どおり禁止されているため、入力履歴などから情報漏えいにつながることはないという。

また、モダンUX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)として、タッチキーボードで選択可能な分割キーボードのレイアウトを大きく変更し、かなテンキー入力に変更した。ひらがなと英数字を別々に入力するテンキーを用意し、マルチタップ入力やフリック入力といったスマートフォンライクな入力を可能にしている。今後登場する8インチクラスのタブレット型コンピューターで威力を発揮しそうだ。なお、キー入力を減らすための予測候補も強化されたという(図12~13)。

図12 Windows 8の分割キーボード。英語ベースのレイアウトだった

図13 Windows 8.1へ大きく変化した分割キーボードのレイアウト。日本語入力を意識している

これらの変更点はモダン環境用Microsoft IMEのみであり、デスクトップ環境で用いるMicrosoft IMEは従来どおりだ。そもそもモダン環境用Microsoft IMEは、デスクトップ環境用Microsoft IMEと比較するとすべての機能を搭載しておらず、互換性の問題も生じている。そのため、モダン環境およびデスクトップ環境で異なるMicrosoft IMEというハイブリッド提供に至ったという。なお、両者の辞書や学習結果は個別に保有しているが、Windows 8.1が備えるローミング機能でデータは共有されるそうだ。

直接的な機能ではないが、同社はビッグデータを活用した言語モデルを開発し、辞書などに反映しているという。以前から明言されているように日本語以外にも中国語や韓国語など東アジアの辞書は本プロセスを用いて開発しているが、その結果として、最新流行語を辞書化した「流行語辞書」を従来の辞書更新サービスよりも短いサイクルで配信することを明らかにした。現時点ではリリースタイミングや更新頻度は未定だが、開発担当者は隔週程度で提供したいという。なお、こちらはモダン環境およびデスクトップ環境用Microsoft IME両者に提供される予定だ。

そして3つめは日本語タイポグラフィに関する解説が行われた。以前から日本マイクロソフトは英語版リリース後に、ローカライズクオリティのチェックや特定言語固有の機能検証、リクアイアメント(Requirement:要求仕様)といった工程を行っている。Windows 8.1も同様のプロセスを踏んでいるが、より美しい日本語をWindows OS上で実現するため、今回は開発時点からモダンフォントである遊明朝/遊ゴシックの採用に至ったという。

そもそもWindows Vistaでは和文ゴシックフォントとしてメイリオを採用した。これは英語版Windows Vistaで用いられたフォントの書体に近いという意味で搭載されたものだが、Windows 8以降はデザインがモダン化したと同時に、高コントラスト環境で見やすい文字を利用可能にするため、新たなフォントの搭載が必要という結果に至ったそうだ。

遊明朝/遊ゴシックは字游工房が開発・発売するフォントの1つだが、Windows 8.1搭載版は、Adobe-Japan 1-6(JIS X0213-2004、JIS X0212およびU-PRESS用文字を追加)に加えて、MSフォントと互換性を維持するための237文字やARIB外字を独自追加したという。あくまでも同フォントはコンテンツ向けであり、UI向けに最適化されていない。そのため、Windows 8.1もWindows 8に引き続いてMeiryo UIフォントが使用されている。

同担当者が述べたもう1つの改良点が、Internet Explorer 11のEPUB 3(3.0)対応だ。正直なところ寡聞にして知らなかったが、同環境ではルビおよび縦中横(たてちゅうよこ)が正式にサポートされるという。具体的には2文字以上の親文字に対するグループルビや、親文字とルビ間の適切なスペースを保持するラインスペース、ルビの有無に関わらず均等な行間を実現する行間機能に対応。縦組み文章で文字を横組みにする縦中横は最大4桁に対応する。

これは、Internet Explorer 11で電子書籍コンテンツを閲覧することを踏まえての対応だという。ただし、国際電子出版フォーラムが規格化したEPUB 3も多くの部分がWorking Draftの段階であり、未確定要素が依然残されている。そのため、今回の対応はあくまでもベーシックな部分のみを実装したそうだ。実際に試してみたかったが、本機能はRTM版では未実装らしく、正式対応はGA版以降となる。