Project MANTLE
2つ目の違いとして挙げられたのがSuper High Resolution Displayである。ただこれは4K Displayへの対応とか、最大6画面の表示といった事柄であって、現在のRadeonでも実現できている内容であり、NVIDIAとの差別化にはなってもRadeon HD 7000/8000シリーズからの変更という訳ではないのでここでは割愛するとして、3つ目に挙げられたのがProject MANTLEである。
Project MANTLEとは何か? というと、既存のDirectXやOpenGLとは全く異なる、新しい3D描画APIである(Photo20)。何でこんなものが必要か、といえば既存のAPI、特にDirectXはもっと描画ポリゴン数もテクスチャもずっと少ない頃に仕様が策定されたAPIであり、現在の猛烈な分量のポリゴンやテクスチャでは恐ろしく効率が悪い事に起因する。
ただしMicrosoft自身も既にDirectXの開発をほぼストップしており、現在はマイナーバージョンアップを行っているに過ぎない。DirectX 12に関してはまだ公式には発表されていないが、今年4月頃にAMDのRoy Taylor氏(Vice President of Communications and Industry Marketing)がDirectX 12は登場しないという自身の見解をメディアに発表しており、今のところこれを否定する発表も特になされていない(ちなみに元ネタはこちら。英語翻訳版はこちら)。
この真偽はともかく、AMDが何かしら、もうすこし効率の良いAPIが必要としているのは間違いない。加えて言えばHSAとの絡みもある。特にXBOX OneやPS4の登場もあって、これら全体をまとめて扱えるフレームワークがAMDの復活には非常に重要であった。
その答えがMANTLEと言うわけだ(Photo21)。これを使う事で、これまでよりもAPI Callのオーバーヘッドを減らす事で、最大で9倍のAPI Callが可能になるとしており、これは特に高解像度における性能改善に効果的に思える。
またMANTLE Driverは今のところWindowsに特化という話も特に無いので、マルチプラットフォームにおける共通フレームワークを作りやすくなるというメリットも考えられる。勿論AMDもそうしたマーケットを重要視しており、こんなスライドをMANTLEの紹介の前に挟んでいた(Photo22)。
Photo22:ぶっちゃけAMDのCPU部門は苦境であり、これをGPUやAPU部門でなんとかカバーしている状況である。したがってAMDとしてはGPUやAPUでのマーケット拡大が必須であり、これを支えるものの一つがMANTLEと言うわけだ |
もっともMANTLEに関する話はここまで(Photo23)。詳細は11月のAMD Developer Summitまでお預けとなった。という訳で、話を戻すとGCN、TrueAudio、超高解像度、そしてこのProject MANTLEの4本柱で2014年に臨む(Photo24)、というのがAMDのグラフィックに関する基本方針であることが明らかにされたのが今回の発表会であった。
Photo23:AMD Developer Summit 13(APU13)は11月11日~14日にかけて、サンノゼで開催予定。多分筆者も行く |
その他
以下余談を若干。今回は様々な新ゲームソフトの紹介も行われたのだが、こうした中に混じってMAINGEARが投入したのが、世界初(?)の「垂直GPU放熱ソリューション」(Photo25)。会場でもデモ機が稼動していた(Photo26,27)。
Photo25:「一番放熱するのがGPUだから、GPUの排気を直接上に出すのが一番効率がよい」事そのものは理にかなっている。ついでに言えばCPUクーラーも液冷タイプだとバックパネルにラジエータを置く形になるから、これを上に向けるのが一番効率がよいのもこれまた事実 |
もう一つ面白かったのがRAPTR。RAPTRそのものは独立したゲーム配信プラットフォームというか、ゲームランチャーというか。一番近いものとしては、ValveのSteamを考えてもらえればよい。面白いのはそのSteamのゲームもRAPRTで管理できたりするあたりだが、このRAPRTがAMDのプラットフォームに最適化したバージョンをリリースした。
具体的に言えば、プラットフォームの性能にあわせて、自動的にゲームのパラメータ設定をおこなってくれるところだ。これをどうやるか?というと、まずデフォルトパラメータのまま実行し、その際にフレームレートを自動で取得、そしてフレームレートの分布を計算する(Photo29)。次に、そのフレームレート分布を元に、RAPTRに登録している1800万ユーザーのデータと付き合わせることで、一番最適なパラメータを決定、これを設定するというものだ。なのでユーザーから見ると設定は3種類しかない(Photo30)。
これにより、簡単にゲームの設定の最適化が可能になるというものだ。現在はベータ版が先ほどのURLよりリリースされている。どんなゲームにも対応しているわけではないが、試してみるのも面白いかもしれない。