現在公開中のフル3DCGアニメーション映画『キャプテンハーロック-SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』の日仏交流上映会が11日、都内で行われた。
本作は、公開直前にヴェネツィア国際映画祭に出品され、78の国・地域から配給オファーを受けているという国際的な人気タイトルだが、フランスにおいては1970年代末にTVアニメ版『キャプテン・ハーロック』(フランス名は『Capitaine Albator』)が放送され、視聴率70%を記録したこと言われる国民的人気作品である。
今回は、在日フランス人を中心としたハーロックファンを招いてフランス語字幕での上映会。上映に先立ち、原作者・松本零士氏と、フランス大使館の参事官ベルトラン・フォール氏とのトークセッションが行われた。
創作の土壌としてのフランス文化
松本氏は2012年、フランス芸術文化勲章のシュヴァリエ(芸術文化勲章の等級のひとつ)を授与された。芸術・文化に大きく貢献したと認められる人に贈られるもので、日本ではほかに作家・川端康成氏、芸術家・草間彌生氏、音楽家・坂本龍一氏などが受勲している。フォール氏と松本氏はこの叙勲式で初めて対面したという。
フォール氏:素晴らしい作品を制作されたこと、また多くのファンを生み出し、フランスとの架け橋になったことに、感謝の気持ちを込めて授与されました。叙勲式では、松本先生ご自身がどれだけフランス文化に影響を受けたか、お話しされたことが印象に残っています。
松本氏:賞を頂いて、大変光栄に思っています。私は子供の頃からフランスの漫画や映画に親しんできました。特に『わが青春のマリアンヌ』は、思春期の少年の胸を揺さぶる素晴らしい映画。これほどの作品は他にありません。他にもいろいろなフランス映画が持つ独特のムードに心を打たれました。
さまざまなジャンルで活躍するクリエイターには、多かれ少なかれ若い頃に海外の映画・文学・音楽などを受けたと自覚する人が多いが、松本氏の作品は確かにハリウッド的な派手さや爽快さというより、赴きある設定や余韻の残るストーリーの印象は、ヨーロッパ的と言えるかもしれない。
70年代末、フランスの空をアルカディア号が飛んだ
フランスにおける『キャプテンハーロック』テレビ放送を見て育った世代は、ハーロックのフランス語名にちなんで「アルバトール世代」と言われているそうだ。今回登壇したフォール氏もその一人である。
フォール氏:フランスでは1978年から放送され、毎週水曜日(その後土曜へ)宿題が終わるとアニメを見ていました。男女関係なく皆に人気があり、男の子にとっては冒険や宇宙海賊といった要素や、単なる悪者ではなく正義を成す存在であること。女の子にとっては、ハーロックの格好良さや、人を守るために戦うキャラクターであることなどです。
フォール氏自身は、どのようなところに魅力を感じているのだろう。尋ねられると、一瞬照れくさそうに笑ってファンの顔を見せた。社交辞令ではなく、本当にハーロックが好きなことが伝わってくる。
フォール氏:私が一番好きなのは、騎士道に通じる部分があるところです。ヨーロッパに中世から受け継がれてきた精神であり、これに宇宙という現代的な要素が掛け合わされて、非常に楽しいものになったのだと思います。当時は『スタートレック』などの宇宙ものも流行っていましたので、宇宙を舞台にした冒険という面にも惹かれました。
孤高の存在のようでいて、仲間や人々を思いやり、苦難に屈せず自らの意志で戦う。日本で言うなら武士道や日本男児といった、芯の強さを持った人物像だ。そうした設定は、どのようなところから生み出されたのだろうか。……続きを読む