USB Power Delivery
2つ目がUSB Power Deliveryである。USB Power DeliveryのSpecそのものはV1.0が2012年6月にリリースされた。その後、エラッタの修正を行ったV1.1が2012年10月にリリースされ、さらにエラッタの修正を行ったV1.2が今年6月にリリースされている。
Specを見てみると、V1.0→V1.1でも結構赤字(修正箇所)が多いのだが、V1.1→V1.2も結構赤字が多く、こりゃある程度Specの修正が進むまで製品開発は難航したんだろうなぁと想像できる。
それはともかくこのUSB Power Deliveryとは、USBポート経由で最大100Wの電力を供給できるようにする仕組みである(Photo23)。といっても、5Vのままいきなり100Wを供給すると電流が20Aにもなってしまい、ケーブルによる電力ロスが馬鹿にならない(細いケーブルでは発熱により燃焼しても不思議ではない)し、20Aというのは国内だとJIS C61000-3-2が適用されてしまう数字でもある。
Photo23:USB 2.0で2.5W、USB 3.0で4.5W、USB Battery Charger V1.2のスペックでは7.5Wまでの電力供給が既に可能になっている。これを超えて最大100Wまでの電力を供給できるようにする、というのがUSB Power Delivery |
そんな訳でUSB Power Deliveryでは、Profile 1~Profile 5の5つのProfileを定め、5/12/20Vという3種類の電圧のいずれかを供給できるようになっている(Photo24)。とはいえ、お互いに利用できる電圧や電流値が異なると機器損傷と言うか、下手をすると発火とかにつながる。
大体相手が5Vしか認識しないところに、いきなり20Vを突っ込んだら間違いなくパーである。そこでUSB Power Deliveryでは、プラグを挿した瞬間はProfile 1(5V@2A)のみの供給となっており、このあとHostとDeviceの間でメッセージ交換を行った後、目的とする電圧/電流に切り替えるという仕組みになっている。こちらのPowerDeliveryの方はもうサンプルチップもあり、やはり動作デモが行われていた(Photo25~27)。
Photo25:中央に"Display Link"と入っているのが、Power Deliveryに対応したUSB Hubで電源はここから供給される。左のノートはUSB Power Deliveryで動作。右のモニターは単なるモニターで、単にDisplayLinkのUSB Display Adapterを経由して映像を表示しているだけ |
ちなみにPower Deliveryに関しても、やはり5Aともなるとケーブルによる電力損失が馬鹿にならないため、通常のUSBケーブルとは異なる、Power Delivery対応ケーブルの仕様を現在策定中という話であった。
ところでUSB-IFは、このPower DeliveryとUSB 3.1を組み合わせる事で、「信号と電源供給を1本のケーブルで実現できる」事を大きなウリとしたいようだ。こんなチャート(Photo28)も、そうした事柄を強く示している。
ただ現実問題として2K DisplayであればUSB 3.0でも十分足りるから、ターゲットとするのは4K Displayということになる。しかし、こちらではそもそも画面サイズが大きすぎて消費電力が100Wで足りるか微妙(例えばASUSのPQ321Qの場合、消費電力はTypicalで93Wだから、ピークは100Wで足りないだろう)で、現実問題としてディスプレイ用には別途電源ケーブルをつないだ方が無難ということになり、せっかくのPower Deliveryの意味がない。DisplayPort 1.2や、最近2.0がReleaseされたHDMIと比較してどれほどのメリットがあるかは微妙なところである。
むしろ競合するのはThunderboltとか、(Thunderboltに比べてもさらに普及していない)AMDのLightningboltみたいなI/Fになるだろう。実際Thunderboltに比べると、ずっと低価格で、しかもPower Deliveryまでできるのはメリットと考えてよいと思う。とはいえ、USB 3.1の本格普及は2015年に入ってからだし、Power Deliveryではコントローラとは別に電源供給回路が別途必要になるから、その分のコスト増になるわけで、このあたりを勘案するとThunderboltを置き換えるという動きが仮に発生したとしても2015年後半というあたりだろうか?その頃にはThunderbolt2も普及しているであろうから、そう簡単に置き換える風にはならないだろう。
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