遅いハードウエア進化の理由と「iPhoneファースト」
iPhoneを米国で使っていると、その進化に非常に納得感があることに気づかされる。象徴的だったのがiPhone 5への搭載が噂されたものの、結局不採用となったNFCだ。日本ではおサイフケータイなどの機能を実現するため、非接触ICの搭載が期待されていたが、米国での状況をみると、とても搭載されそうになかった。
日本ではコンビニなどに普及しているICカードリーダーだが、米国では西海岸であっても、ごく限られた店舗にしかない。スーパーなどのナショナルチェーンはクレジットカードに加えてバーコードリーダーは完備されている状況で、NFCを搭載するよりも、iOS 6で採用されたバーコードのクーポンなどを管理できるPasbookを導入した方が、米国の現状に即していた。
Appleは全般的にそうだが、テクノロジーや新しい仕組みの導入に対しては、進化を主導できる場合は一気に仕掛けるが、そういう状況が整うまでは時間をかける。日本は米国の市場よりも進んでいるため、iPhoneに対しても期待が大きいが、その通りにならなかった。次のiPhoneに何が起きるか米国で見た方がより分かりやすいのではないか、と思う。
一方「iPhoneファースト」というキーワードは依然健在だ。Facebookに買収された写真加工・共有サービス「Instagram」も、買収まで長らくiPhoneに集中してアプリ開発と機能向上を進めてきた。最近でも、iPhone向けメールアプリ「Mailbox」は利用開始までにユーザーが長蛇の列を作り、サービスを開始してすぐに、「Dropbox」に買収された。
iPhoneを優先してアプリを開発する背景には、1~2つの端末と、ほぼ1種類の最新OSに対して開発を行えば済むため、開発資源を集中させることができる点。これは面白いアイディアがあるが体力がまだないスタートアップにとっては、大きなメリットがある。
またストアの収益性についても、iPhoneに分がある。アプリストアのシェアはGoogle Playが74.4%に対して、iOS向けApp Storeは18.2%となっている。しかしApp Storeの収益はGoogle Playの5倍であり、シェア以上に注目されるアプリ市場になっている。
こうした理由から、ソフトウエアやアプリによるスマートフォンの進化を存分に楽しみたいなら、iPhoneを選んだ方が良い。